北朝鮮、進む権力移譲 総書記義弟の摂政か 4人組支配体制か

【大紀元日本6月15日】北朝鮮では7日、最高人民会議第12期第3回会議が開催され、金正日総書記の義弟、張成沢(チャン・ソンテク)氏が国防委員会副委員長(朝鮮労働党行政部長兼任)に選任された。マスコミ各社はこのことについて、張成沢氏が北朝鮮ナンバー2に浮上したと報じているが、9日の「朝鮮日報」の報道は脱北した政府高官の話を引用し、「軍部と情報機関を掌握している呉克烈(オ・グクリョル)氏を中心として、張成沢、金英春(キム・ヨンチュン)、禹東則(ウ・ドンチュク)らによる4人組が権力の中心にいる」と分析した。

北朝鮮最高人民会議は年1回の開催を原則としてきたが、今年は4月に開かれたばかりで、異例の2回目開催となった。金総書記は健康状態の悪化を懸念し、大規模な政府高官の粛清に踏み切ったと同時に、信頼しているメンバーに権力を分散させ、権力世襲の準備を整えているとみられる。

張成沢:キム・ジョンウンの後見人

張成沢氏は金総書記の実妹・金敬姫(キム・ギョンヒ)氏の夫で、金正日後継とされている三男金正雲(キム・ジョンウン)氏の後見人としても知られている。今回の国防委員会副委員長への昇格は、後継体制を強化する意図があると北朝鮮問題の専門家は指摘する。

まだ20代後半の若い金正雲氏への権力移譲には、軍部の中にもかなりの支持勢力を持つ張成沢氏の助けが不可欠条件だという。

一方、張成沢氏の昇格については慎重な見方もある。韓国中央大学の李兆遠(イ・ジョウォン)教授は、「独裁権力の属性からみて、金総書記は絶対にナンバー2の存在を認めないだろう。張成沢氏も金総書記のそのような考えをよく知っている」と話した。張成沢氏はすでに2回、粛清を経験している。

呉克烈:4人組の中心人物

張成沢がナンバー2という説に対し、同じく国防委員会の副委員長の呉克烈氏こそ、北朝鮮のナンバー2であり、彼を中心とした張成沢、金英春(人民武力部長)、禹東則(国家保衛部副部長)の4人体制が今後北朝鮮を支配すると、北朝鮮の消息筋は主張していると「朝鮮日報」が報じる。 

最近では、金総書記に認知症などの症状が見られ、書類の処理を速やかに行うことができなくなり、業務に空白が生じているという。そのため、混乱を防ぐ目的で呉克烈氏が中心となって、業務の分担が行われている模様。

その体制のなかで起こった哨戒艦「天安」号の沈没事件は、まさに呉克烈氏が掌握する偵察総局の仕業ではないかと韓国の情報機関は分析する。

元北朝鮮政府高官の脱北者は、「事実上、呉克烈氏の権力は金総書記に次ぐほど高い」と指摘し、「現在、北朝鮮で金総書記と実質的な対話ができるのは呉克烈氏しかいない。金総書記も彼に絶大な信頼を置いていることから、情報機関と軍の双方の支配権を彼に一任している」と話した。

百人の政府高官が粛清

世襲に向けての北朝鮮指導部の人事は、「身内」を大事なポストに付かせる以外、政府高官の大規模な粛清も行われていると「朝鮮日報」が伝えた。

粛清された高官のなかには、昨年の貨幣改革の失敗を引責する形で処刑された前労働党企画財政部長の朴南基(パク・ナムギ)氏も含まれる。貨幣改革の失敗で民心が揺らいだことにより、「40年にわたる側近」の朴氏を公開銃殺したという。

また、「幹部の不正で、人民の生活が苦しくなっている」と宣伝し、それに合わせて、幹部約100人を腐敗の理由で解任した。

今までも金正日政権はことあるごとに粛清を行ってきたが、今回の粛清については内部反発も相当あるようだと「朝鮮日報」が報じた。朴南基氏の処刑後に、「金正日は気が狂った」、「利用価値がなくなると、我々にもこういう運命が待っている」と憤りを漏らす幹部もいるという。

北朝鮮の脱出者の話によると、北朝鮮の一般庶民も金正日の死を待ち望み、彼が権力を握っている限り、生活は改善しないとみている。しかし、北朝鮮は中国共産党を盾とする独裁体制を変えない限り、たとえ金正日が死去しても、世襲の指導者のもとでは、生活が改善されることはないと専門家は指摘する。

(翻訳編集・張YH)
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