あの日のエピソード

【大紀元日本8月24日】200数年前のある朝、米国バージニア州リッチモンドでの出来事である。質素な身なりに少し破れた帽子を被った一人の老人が、かごを提げて市場に買い物に来た。

「七面鳥を一羽ください」と老人が言うと、店の主人はよく太った大きな七面鳥を老人に渡した。老人は、「私はこれが欲しくてここに来たのです。妻に見せたらきっと喜ぶでしょう」と微笑んだ。

老人はお金を払って七面鳥をかごの中に入れ、その場を離れようとした。その時、一人の若者が七面鳥を買いにやって来ると、店の主人に自宅まで配達するよう要求した。

「すみません、うちの店では、配達はできないんです。子供が病気なので、私はここを離れるわけにはいきません。お客さん、ご自分で持って帰ってくれないでしょうか?」と主人が断ると、若者は「自分で持って帰れというのか」と怒った顔で言い返した。

隣で黙々と二人の話を聞いていた老人は、「すみませんが、お住まいを聞いてもよろしいですか?」と若者に尋ねた。若者が住所を告げると、「じつは私もそこに行くのですが、もしよかったら、私が代わりに持ちましょうか?」と提案した。それを聞いた若者は、「ああ、それは助かるよ。それでは宜しく」と老人に自分の七面鳥を渡した。

2人が若者の家に着くと、老人は七面鳥を若者に渡し、帰ろうとした。若者が「いくら払えばいいかい?」と聞くと、老人は「大丈夫です。かまいませんから」と丁寧に断り、挨拶をしてその場を離れた。

老人のうしろ姿を眺めていた若者は、再び七面鳥を買った店に戻ってきて、老人の名前を尋ねた。

ジョン・マーシャルという方です。連邦最高裁判所長官で、アメリカで最も偉大な人物の一人です」若者はそれを聞くと、頭を下げて顔を赤らめた。

その日、ジョン・マーシャルは若者に、とても重要なことを教えた。「人に尊敬されるのは、華やかな外見ではなく、謙虚友好的な行いである」ということを。

※ジョン・マーシャル(John Marshall, 1755年9月24日 – 1835年7月6日)―アメリカ合衆国の第4代連邦最高裁判所長官。前歴として、連邦議会議員、第4代アメリカ合衆国国務長官も務めている。第3代大統領トマス・ジェファソンとは親戚である。

(翻訳編集・柳小明)