英国バイリンガル子育て奮闘記(54) 仮装で登校(1996年頃)

【大紀元日本9月27日】小学校では、何の予告もなく、「あした、XXの格好してきなさいって」と娘の口から言われ、「何?」と家の中を見回すことがしばしばあった。読書週間の時は、絵本の主人公になってきなさいとのこと。この時は、『不思議の国のアリス』のうさぎさんになってもらうことにして、ウサギの耳だけ白の紙で作り、輪ゴムをつけて頭にかぶせ、わたしの古いチョッキを着せ、しっぽの代わりに白のボンボンを縫い付けて乗り切った。

母親によっては、ここぞ腕の見せ所、とアリスの中のトランプさんに子供を仕立てあげたり、オズの魔法使いのライオンさんなど、びっくりするような格好で登校する子もいた。そして、普段の制服は免除で、一日、 いろいろな格好のままで過ごす。

上の写真の時も、突然、「ビクトリア時代の格好してきなさいって」とのお達しを受けた。たまたま家にあった、日本人家庭から譲り受けたフリルのついたブラウスを着せて、先々のことを考えて買っておいた、ちょっと大きめのスカートを履かせて、お屋敷のお嬢様(?)になってもらった。

この時は、全校一斉に、一つの学期を通じて、ビクトリア時代のことを学んでいたようで、学年ごとに違うアプローチでビクトリア時代について、様々な活動をしたようだった。エジプトがテーマの時もあり、校内にスフィンクスやピラミッドがベタベタ貼られていた。歴史や国語の時間に留まらず、いろいろな科目でエジプトを取り上げたようで、美術の時間には、古代エジプト風の鳥がついた焼き物の箱を作ってきた。適当な大きさだったので、小銭入れとしてしばらく玄関で重宝させてもらった。

時間割はなかったが、カリキュラムはあった。何の理由か忘れたが、2年生の担任の先生が、教員用のカリキュラムをコピーして個人的に渡してくれた。コーンウォール州の自治体が用意して各校に配布していたのだと思う。たまたまその時のカリキュラムに、100年前に地元に住み着いた画家たちであるニューリン派について研究しよう、という項目があったのを覚えている。ニューリンの漁村の厳しい生活を写実的に記録した有名な絵画もあり、絵の鑑賞をしたり、漁業について話し合ったりする項目があったと思う。このような指導に基づいて、いきなり「明日はXXになりましょう」という運びになったのかあ、と今振り返って納得している。

著者プロフィール:

1983年より在英。1986年に英国コーンウォール州に移り住む。1989年に一子をもうけ、日本人社会がほとんど存在しない地域で日英バイリンガルとして育てることを試みる。

(続く)