英国バイリンガル子育て奮闘記(72)男の子と女の子(1998−2000年)

【大紀元日本1月31日】日本で私が小学校6年のころ、女の子だけ特別に放課後残され、花が開くビデオを見せられた。そのあと、アンケート調査のような紙がまわってきて、質問に答えるようになっていた。よく意味は分からなかったが、家に帰って母に話したら、ひとしきり生理用品の説明を受けた。

娘のイギリスでの性教育は、もっとあからさまなビデオのようだった。男子も女子も同じクラスで、男性の身体と女性の身体を週に一回、二週間にわたって見せられ、授業で説明があったようだ。

公立の小学校では5年生から性教育のビデオを見せるので、娘の通い始めた私立でもこれまでは小学校6年生のカリキュラムだったが、 試験的に1年早くビデオを見せることにしたそうだ。 私立の生徒だけ一歩遅らせても、小さな田舎では皆、いろいろな活動でつながっているんだから、足並み揃えてもらったほうがいい、と私はある意味ホッとしていた。

しかし、年配の親から苦情が出たらしい。学校からの回覧に、来年からはまた6年生のカリキュラムに定着させるという、校長先生からの説明があった。苦情を訴えた年配の両親の家族で、高齢になってから一子をもうけたため、息子の兄弟としてルーマニアからの養子を育てていた。その後校長先生と話す機会があったのだが、ビデオを見てから二人の息子に落ち着きがなくなったという。後日談として娘に話したら、「あの後、マイケル(仮名)は、一番女の子に熱心になっちゃったよね」というコメントが返ってきた。

娘がまだ幼稚園のころ、イギリスのメディアで、性教育を小学校低学年に早めようという話が取りざたされていた。私は、異国の流れを寛容に受け入れ、逆らわないようにしようと心がけていたが、電車の中で同席したおばさんが、「この国はどうなっちゃうんだろうね。幼児期を奪う必要は全くないのに」と憂いていた。

なるほど。性の知識や避妊の方法を伝える性教育は、婚前交渉を公に認める現代の英国社会の状況に合わせたものだが、ある意味で学校の方で「セックスしていいよ」と太鼓判を押しているようなものだ。生理という形で変調が現れる女子は、どこから変調が来るのか知っておく必要はあるが、同年の男子の場合は変に刺激することになるのではないだろうか。

イギリスはヨーロッパの中でもティーンエージで妊娠してしまう子どもの数が多いと聞いた。小学校4年生くらいから、胸や足を出し始める女の子の姿を見て、多分事実だろうなと当時納得していた。この土壌で、男の子に太鼓判を押してしまったら、歯止めは効かないだろう。妊娠する子どもが多いから、その前に知識を伝えなければ、という政府の方針だったのだろうが、現状をさらに悪化させるだけだったと思う。

「どうやってセックスするかは学校で教えてくれたけど、どうやったらセックスしないで済むかは教えてくれない」娘の鋭い明言だった。モラルの枠組みが崩された今、苦しんでいるのは若者たちだ。

(続く)

著者プロフィール:

1983年より在英。1986年に英国コーンウォール州に移り住む。1989年に一子をもうけ、日本人社会がほとんど存在しない地域で日英バイリンガルとして育てることを試みる。