中国政府系ファンド、正体隠して日本企業への出資拡大へ

【大紀元日本2月28日】「SSBT OD05 Omnibus Account Treaty Clients」。昨年4月から9月にかけて、東芝、資生堂、キリンホールディングス、東京電力といった主要企業の株主名簿の上位10株主にこの名前のファンドが登場した。また、ソニーや三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループなどの株主リストにも、類似した名義のファンドが名を連ねている。25日付のウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。

同報道によると、正体不明のこのファンドは昨年、日本企業への投資額をひそかに拡大させている。それにともない、一部の日本企業は、株主判明調査を行う日本シェアホルダーサービス(JSS)に同ファンドの情報収集を依頼した。

結果、SSBT OD05の背後には、中国政府系ファンドの中国投資有限責任公司(CIC)と、外貨運用を管轄する中国国家外為管理局(SAFE)の存在が浮かび上がったという。

ウォール・ストリート・ジャーナルの報道は、ソニーを例に挙げ、SSBT OD05の投資手法を説明した。ソニー株を1.6%保有する同ファンドについて、ソニーは調査が行われるまでに把握している情報は、同ファンドによる株式の購入は、シドニーのステート・ストリート・バンク・アンド・トラストで登録されている投資ビーグルを通じて行われており、常任代理人はHSBCホールディングス、ということのみだという。日本の金融商品取引法では、5%以下の株式を保有する場合はこれ以上の情報を提供する義務はないためだ。

SSBT OD05のように、中国政府系ファンドが海外の投資ビークルを通じて投資する形態は、中国の海外での投資手法の変化を示している、とVOAが米ムーディーズの中国経済アナリスト・成旭氏の見解を引用して報じた。正体を隠して低姿勢に投資拡大を狙えば、世論の圧力をかわし、投資先の資産コストの上昇を防げるといったメリットがあると同氏は分析する。

英紙フィナンシャル・タイムズによれば、同様な投資手段で中国投資有限責任公司(CIC)は米投資会社ブラックストーンと組み、21日、米金融大手モルガン・スタンレーが保有する11億ドル相当の日本の不動産ローンを買収したばかりという。この案件に関しても、ブラックストーンの関与は広く知られていたが、主要な買い手がCICであることは明らかになっていなかった。

日本のちばぎんアセットマネジメントが最近まとめた報告によると、中国の政府系ファンドは昨年4月から9月までの間、日本企業への投資額を2倍以上拡大し、総額は昨年9月30日時点で1兆6200億円と推定されている。投資先も35社から90社へと拡大。この数字には政府系以外の中国投資家の投資は含まれていない。

日本への投資拡大は、中国の政府系ファンドのリスク分散の手段の1つだと成旭氏は指摘する。「日本の株式市場の変動は欧米市場と必ずしも同一とは限らない。SSBT OD05が出資している日本企業は業績が比較的いい企業ばかりだ。中国とのつながりも深いこれらの企業に投資することは、相対的に堅調な東アジアの経済を利用しているとも言えよう」と同氏は分析した。

ウォール・ストリート・ジャーナルの報道で、JSSの今出達也常務もSSBT OD05はM&A等を目論む戦略的投資ではなく、分散ポートフォリオ投資であるとの見解を示している。

(翻訳編集・張凛音)
関連記事
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
メディアのスクープ話が世の中を動かす。特に最近は「文春砲」など週刊誌メディアの元気が良い。同時に報道のありかたが問われている。国が国民の幸福を奪うことがあったら、ある程度、国家権力の作ったルールを逸脱する「反社会性」を持ち、戦わなければいけない時がある。記者は反社会的な面を持つ職業で、メディアは反社会性を持つ企業なのである。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]
上川陽子外務大臣は、パナマ在留邦人及び進出日系企業関係者と昼食会を実施した。日・パナマ間の経済分野における協力の可能性や課題、教育などについて、意見交換を行った。
2月23日午後、上川陽子外務大臣はパナマ運河視察を行った。日本が主要利用国であるパナマ運河の安全かつ安定的な利用環境確保に向けた連携を維持すると表明