【伝統を受け継ぐ】「ラビーン」菓子店のバウムクーヘン

【大紀元日本7月1日】バウムクーヘンとは、いうまでもなく断面が木の年輪に似たドイツ伝統の焼き菓子のことだ。バウムはドイツ語で木、クーヘンは焼き菓子を意味する。

ベルリンの南部、シュテグリッツ地区の静かな住宅街にひっそりとある「ラビーン」菓子店、前庭には植込があり、うっかりするとそこにケーキ屋があることを見過ごしてしまいそうな奥ゆかしい佇まいである。

店に入ると大きなケースの中には季節、季節の様々な色・形のケーキがずらりと並ぶ。クリーム、チョコレート、果物をふんだんに使った、直径30cmは優にある丸型のトルテが美しさを競い、大きい四角形に焼いて切り分けたシンプルなクーヘンも魅力的だ。チョコレートやプラリーネなどが周りの壁を華やかに飾る。店中央には「クーヘンの王様」バウムクーヘンが楕円形の陳列台に威風堂々と陣取っている。

ラビーンのバウムクーヘン(写真提供・Konditorei Rabien)

「ラビーン」で作られる菓子は40種類におよぶ。その内、主力商品はバウムクーヘンで全製造の50%を占めるという。「といっても、ドイツでは日本ほど一般的な菓子ではないのですよ。日常的に食べるお菓子ではなく、クリスマスや誕生日に贈る、贈答用の高級菓子なんです」と3代目店主、菓子作りマイスターのクラウス・ラビーンさんはいう。「注文に応じて世界中に発送しています。一番のお客様は日本の方です。個人のお客様がほとんどですが、東京の伊勢丹からも注文がきます」と意外な事実も。

「ラビーン」のバウムクーヘンは素朴な味で特別なところはない。ところが、飽きのこない、しっとりとした絶妙の味わいはやはり絶品としか表現できない。この味の秘訣はどこにあるのだろうか。「秘密のようなものはないのです。ただ、材料は新鮮な自然のもののみで、添加物は一切使いません。1メートルの横棒を回転させ、ケーキ種を柄杓でかけながら、直火で焼く。そこに熟練の職人のさじ加減があるのです」「私の祖父にあたる初代、エルンスト・ラビーンのレシピと製法を守り続けて焼いています」とマイスターは話す。

4代目店主 菓子作りマイスター、ヨハネス・ラビーンさん(写真提供・Konditorei Rabien)

「ラビーン」の創業は1878年、ドイツにまだカイザー(皇帝)が君臨していた時代である。「我々のカイザーは、ベルリンで政治を、ポツダムでは生活をする」と当時いわれたように、ポツダムは宮廷文化の中心であった。

ドイツ語に「コンディテルン ゲーエン(konditern gehen)」という今ではあまり使われなくなった表現がある。文字通りには「菓子屋、つまりカフェに行く」という意味だが、今どきの日本語では「お茶する」が近いようだ。「お芝居を見る」「コンサートに行く」と同じように「お茶する」は、当時の人々にとって楽しみの一つであると同時に、社交の場であり、文化であったのだ。

宮廷文化華やかなポツダムにあって、社交の大切な一翼を担っていたのが「コンディトライ・ラビーン(Konditorei Rabien)」、ラビーン菓子店であった。店主は宮廷御用達のタイトルを許されていた初代ラビーン氏だ。客層も芸術家・文化人、宮廷関係者、一般の市民など幅広く、上階の広間では、朗読会、コンサートなどの文化的な集まりもあり、多くの市民に文化サロンとしても愛されたという。

その後のドイツ激動の歴史は、「ラビーン」の運命をも翻弄することになった。第一次世界大戦後のドイツ革命、プロイセン王でドイツ皇帝であるヴィルヘルム2世の国外亡命に伴う共和制への移行、「ラビーン」の常客の多くが去り、代わって主人のいなくなった城や文化遺産を目当てに外国からの観光客が大挙して訪れるようになった。

次の大戦では、ポツダムの旧市街と文化遺産の多くは、たった1日の爆撃で灰燼に帰す。戦地から帰還した2代目のマイスターは、奇跡的に戦火を免れた「ラビーン」の建物を見て再開を決意し、食糧事情が絶望的な状況の中でなんとか開店にこぎつけた。しかし、戦争よりも厚い壁がその行く手を阻んだのだ。戦後、ソ連占領下に置かれたポツダムでソ連式の国営商業組織が「ラビーン」に触手を伸ばした。初めは穏やかに、次第に恫喝となり、「ラビーン」は国営組織に接収された。

「1952年に西ベルリンに移りました。戦後の6年間は本当に大変な時代でした。18歳の時から長男として父を助け、1973年に家業を継いだのです。おかげ様で世界中にお得意様ができました。現在は息子のヨハネスが4代目を継いでいます。彼のこどもが5代目を継いでくれるとうれしいですね」とクラウス・ラビーンさんは語った。

ラビーン菓子店(写真提供・Konditorei Rabien)

ラビーンのトルテ(写真提供・Konditorei Rabien)

ラビーンのトルテ(写真提供・Konditorei Rabien)

(温)