暗闇でも手の動きが見える?=米研究

【大紀元日本11月28日】一筋の光もない真っ暗な空間で手を左右に振ってみる。果たして影のような動く物体が見えるだろうか? 認知研究を行っている米科学者によれば、およそ50%の人が「見える」という。

人は目からの情報だけで物体を見るのではなく、さまざまな感覚で捉えた情報を脳で統合し、視覚として感知することが、これまでの研究で分かっている。また、洞窟探検家などが、暗闇の中で自分の手が見えたという報告もある。

米ロチェスター大学の脳認知科学者・デュー・テイディン教授(Due Tadin)をリーダーとするチームは、暗闇でも物体が見えるかどうかという実験を行った。

被験者らは、「小さな穴がある」目隠しをされ、微小な明かりを灯した部屋で、手を左右に振るよう指示される。実際には穴は開いていないが、被験者らは手の動きが見えると感じやすい。次に、真っ暗な部屋の中で、穴の開いていない目隠しをして手を振る。被験者らは、今度は見えていないと信じやすいが、実は両方とも光と視覚を遮断するのに同じ条件なのだ。最後に、被験者らは本当に見えているのかどうかを確認するために、コンピューターのアイ・トラッカー(視覚追跡器)が取り付けられた。

すると、約半分の被験者は、暗闇の中で自分の手が見えたと報告した。一方、科学者が被験者の前で手を振ると、ほとんどの人が「見えない」と証言することから、暗闇での経験は、自分自身の動きでなければならないことも実証された。

この中でも、手の動きを驚くほどくっきりと見ることができたのは、もともと「共感覚」を持っている人たちだ。共感覚とは、数字や文字、音、匂いなどに色を感じたりする能力のことで、世界中にこの能力を持つ人が存在する。この実験に参加した科学者リンゼー・ブロネカント氏(Lindsay Bronnenkant)もその一人で、彼女は子供のころから、「Aはいつも黄色でYはオレンジっぽい黄色。BはネイビーでCは濃いオレンジ」と感知してきた。彼女にとっては、これが普通だと思ってきたという。この実験では、彼女はぼんやりとした光の影として自分の手が動くのを感知することができた。また、別の共感覚者は、95%の正確さで手の動きを目で追っていることがアイ・トラッカーで確認された。

色と文字を同時に感知する人が、よりはっきりと手の動きを見ることができたことから、脳は目からの情報だけではなく、さまざまな感覚の相互作用によって事象を感知していることが分かった。

クロス・モーダリティー(異なる感覚領域を連合する能力)に優れた共感覚者のブロネカント氏は、世界がひとつに繋がっていることを実感すると話す。「数学や化学、芸術などは異なる分野だと思われるけど、実はそれらも同じ世界の一面です。それらは、ただ異なるレンズで同じ世界を見る方法に過ぎないのです」

 (翻訳編集・郭丹丹)