中立装うも背後に北京 香港メディアの悲哀

明報オーナーの張暁卿氏(左)と更迭された劉進図編集長(右)(大紀元合成)

【大紀元日本1月8日】香港の有力紙「明報」は6日、突然、編集長の更迭を発表した。同紙のオーナーは江沢民一派に近いことで知られているが、最近では習近平政権に好意的な報道が続いていた。このことが江派の不満を買い、編集長の交代にいたったとの見方がある。さらに今回の交代劇で、北京サイドが香港や海外の中国語メディアを巧みに操っている構図も浮き彫りになった。

同紙は7日付のトップ記事で、現在の劉進図編集長の退任を伝えた。理由は明確に示されていないものの、同紙が昨秋から、テレビ局の開設申請をめぐる香港政府の対応を批判し続けたからではないかと指摘されている。ただ、大紀元が入手した情報によると、このことは表向きのきっかけに過ぎず、その深層には北京政府における権力闘争が影響しているという。

明報は香港の返還を控えた1995年にマレーシアの実業家・張暁卿氏が買収し、その後は親中の色合いを見せている。当時の江沢民政府と近い関係にあったとされる張氏はその後、中国での事業を順調に拡大させ、「投資額は数十億元(1元は約17円)に達している(ラジオ自由アジア)」

米シンクタンク・ジェームズタウン財団が2001年に発表した報告書のなかで、共産党政府は90年代、第三者を通じて香港メディアの買収に力を入れていたことを明らかにしている。明報もそのうちの一つ。また、同財団の報告書に「明報ニューヨークオフィスの従業員は、彼らの『本当のボス』はほかではなく、中国(駐ニューヨーク)領事館だと明らかしている。彼らには、領事館が指示したすべてのことをやり遂げる義務がある」と記されている。

同紙はこれまで3度にわたり、中国共産党中央党校で行われた中央宣伝部(中宣部)の「トレーニング」に出席していたことも明らかになっている。このトレーニングには、同紙のほか、『亜洲週刊』や「文匯報」「大公報」などの親中メディアの多くも参加している。トレーニングでは「参考用」と称する報道方針を学び、さらに国内旅行などもコースに取り込まれている。

明報の元コラムニスト・樹根氏も、同紙には以前から北京政府の資金が流れ込んでいると話す。「ここ数年来、明報は大きく評判を落としている。多くのジャーナリストは寄稿することをやめている」

明報の人事は昨年の半ばごろから揺れ動いていた。中国の駐米領事館の「世話」になっていた同紙北米版の元総裁・呂家明氏は香港本社に戻り、編集担当の執行役員になっていた。呂氏は江沢民派が明報に送り込んだ監視人だという情報もあり、今回更迭となった劉編集長との折り合いが悪いとも言われている。

一方、明報は最近の報道で習近平寄りの姿勢を見せている。昨年末、同紙は「中国権力の最頂点 習近平の地位が安定」と題する記事を掲載し、江派の怒りを買ったという。同紙報道方針の「ズレ」について、内情に詳しい人間によると、劉編集長が薄煕来事件の裏にある共産党の権力闘争にそれほど精通していないことや、劉氏が最低限のジャーナリズムを貫きたかったことに原因があるという。

共産党政府の香港や海外の中国語メディアへの浸透は以前から報じられている。経済利益をエサに現地の実業家を買収し、その実業家を通してメディアを支配する。そのやり方もますます巧妙になってきており、普段は中立、時には批判的な姿勢も見せるが、いざとなると北京の喉舌となり、嘘の報道もいとわない。

これらのメディアで流される情報の多くは、共産党サイドに操作されている。全人代など重要な会議に関する情報は、ほとんどこのように意図的に放出されている。一方、チベット問題や法輪功問題など、中国共産党が目の敵とする団体の報道については、いっさい口をつぐみ、新華社の報道を転載するか、中国の政府系報道と同じ論調を展開することにとどまっている。

(翻訳編集・張凛音)
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