【伝統を受け継ぐ】バイリンガル落語家 ダイアン吉日

【大紀元日本1月14日】12月8日、大阪の池田市民文化会館で落語会があった。池田日本語ボランティア友の会20周年記念の落語と講演会である。ビートルズの『イエローサブマリン』の珍しい出囃子に乗って舞台に登場したのは、ほっそりとした体に和服をキリッと着こなした金髪の女性落語家、大安吉日ならぬダイアン吉日さんだ。出身はビートルズと同じリバプールである。演目は「国際結婚」、英語の苦手な日本人がイギリス人のガールフレンドの両親に会いに行き、次々と失敗を重ね大汗をかく顛末を題材にしたダイアンさんの創作落語だ。

ダイアンさんが日本にやって来たのは1990年のことだった。「いろいろな国を見たかったから、仕事をやめて大きなリュックを買って、ロンドンを飛び出しちゃった。バックパッカーね」。旅の途中、友だちの勧めで日本に立ち寄った。「そんなに面白いところだったら、3カ月ぐらい滞在してみようかなと思ったのが、23年になっちゃった。長い3カ月やねー」とダイアンさん。

「子供の頃から知らない国のことにすごく興味があったし、古いお城や墓石などアンティークなものが好きだった」というダイアンさんは、すぐに生け花、茶道、着物など日本の伝統文化に興味を持った。ダイアンさんの場合、興味を持ったということは見て楽しむだけでなく、自分でやってみなくては済まないのだ。そして、ある日ついに落語に出会ってしまった。

当時、人気絶頂の落語家、桂枝雀のお茶子の仕事をしないかと友人から持ちかけられた。「お茶子って何するのかなーと不安だったけれど、着物が着られると聞いてヤルヤル!と引き受けました。その頃まだ着物持ってなかったからね」。桂枝雀は伝統の落語を英語でやるという意欲的な試みをしていた。英語落語の先駆者である。

「すばらしいパフォーマンスだったよ。『時うどん』の話だけど、熱々のうどんをすごくおいしそうに食べる様子を見て、うどんの匂いがしてきてお腹がすいたほど」「扇子がお箸に見え、手ぬぐいがサツマイモに見えたり、本に見えたり、想像力を働かせるパフォーマンス、イマジネーションの世界ね。こんなすばらしい文化がどうして外国で知られていないのだろうって不思議だった」

そして、ほどなくダイアンさんは落語道場に通うことになった。小道具の使い方、目線で登場人物を演じ分けることなど、落語の基礎を習ってますます落語に魅せられていった。そんなある日、舞台に上がってやってみないかといきなり出番が回ってきた。「ちょっとびっくりしたけれど、頑張ってやりましたよ」「子供の頃から友達を笑わせるのは好きだったけど、恥ずかしがりで人前で話すのが苦手だった。でも、お客さんが笑ってくれたので、私も元気になって自信が付いた。今はもう平気。信じられへん!」。ダイアンさんの初舞台である。1998年のことだった。翌年には日本人の落語家たちとアメリカツアーをやり、英語の落語ならアメリカ人にも楽しめるという手ごたえを感じた。「みんなすごくエンジョイしてくれた。すごく面白い経験だったよ」

古典落語から創作落語まで幅広いレパートリーを持つダイアンさんだが、得意の演目のひとつは、日本での驚きの体験をネタにした『ワンダフル・ジャパン』だ。「日本に来てびっくりしたことありますかとよく聞かれるけど・・・あるある、話し出したら何週間もかかるほど」「例えば、無料でもらえるティッシュペーパー。それに、電車の中で寝ること。もっとびっくりするのは、降りる駅に来たら、ちゃんと目を覚まして降りるの。あれ不思議やねえ」と日本での体験や驚きがすべて落語になるのだ。

昨年6月にダイアンさんは第9回中曽根康弘賞を受賞した。日本の伝統文化の素晴らしさを海外に伝える活動に取り組んでいるというのが受賞理由だ。旅行好きのダイアンさんは、毎年少なくとも1、2回は外国へ出かける。しかし、ただの観光旅行ではない。出かけた先で英語の落語を披露するのだ。そして、着物の着付け、風呂敷の使い方、師範の資格を持つお茶や生け花なども紹介するという。「日本の文化は本当にすばらしい。だけど、日本人あまり気が付いてないみたい。モッタイナイヨ!」

「夢は落語の世界ツアーをやること」と目を輝かせるダイアンさん。「人生は、夢を持ってチャレンジすること、自分を信じること、間違いを恐れないこと、笑顔で心から話すことが大切」ともいうダイアンさんのことだから、きっと実現することだろう。国境、人種、言葉の壁、人の心の壁をヒョイと乗り越えて。

ダイアン吉日さん(写真・大紀元)

(温)

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