自分の過ちに気づき、生まれ変わる(四)

【大紀元日本5月7日】清の時代、揚州に王中丞(おうちゅうじょう)という男がいた。彼は幼いときに父を亡くし、家族は非常に貧しかった。彼は文才があったため、人々の訴状を代筆することで家計を助けた。20歳になり、王中丞はたびたび科挙の試験を受けたが、受からなかった。

ある日、王中丞ははっきりとした夢を見た。夢の中には堂々とした帝王が真ん中に座り、臣下たちが周りを囲んでいる。帝王は臣下たちから渡された巻物に目を通すと、人名が書かれた箇所になにやら書き込んでいた。帝王は一通り作業を終えると、紙切れを王中丞の前に差し出した。

紙には、王中丞が科挙に合格し、高位の官職に就くと書かれている。しかし、彼は悪人のために訴状を代筆したことがあるため、「運命は変わる」とあった。彼が書いた虚偽の訴状により、無実の人々が苦しんだというのだ。このため、彼に授かる予定だった福運が、すべて取り消されることになっていた。

王は帝王の前にひざまずき、許しを請うた。帝王は王中丞に、厳かに言った。「お前の母親への孝行に免じて、もう一度機会を与えよう。自分の行いをすぐに正すのなら、福運をすべて戻してやる。正さなければ、命で償わねばならない」。隣にいた臣下の一人が王中丞の肩を押すと、彼は夢から覚めた。

王中丞の夢は、とても鮮明だった。彼は何度も夢を思い返し、過去に犯した過ちを心から悔いた。そして、これからは善行に務め、自分の文章力を活かして人々のために働こうと誓った。その後、王中丞は争いごとがあれば仲裁に入って穏便に解決し、困っている人がいれば代わりに法的文書を作成した。

ある日、王中丞の近くに住む未亡人が懐妊していることが分かった。彼女の遠縁にあたる一人の男が、お腹の子は亡くなった夫の子ではないと言いふらしたため、彼女は両親の元へ返され、亡夫の財産を受け継ぐことを許されなかった。彼女の両親は報復を恐れて訴えることもできず、彼女は屈辱の中で耐えるしかなかった。

噂を聞いた王中丞は彼女の実家を訪れ、彼女のために訴状を作成し、行政官に提出することを強く勧めた。彼女の家族や親戚が訴えることをためらっているのを見て、王中丞はきっぱりと言った。「女性の名誉と子供を守ることは最大の慈悲の行為です。私には、弱者を守る責任があり、それをやり遂げる能力もあります。この揉め事に関与したのは、見返りを求めるためではありません」。彼女の親戚は王中丞の言葉に心を動かされ、訴えることに協力することにした。

行政官はこの訴状を受諾し、早速調査を始めた。すると、男は不当に未亡人を非難していたことが発覚し、彼女の名誉は回復された。彼女の家族は感謝の印しとして王中丞に金を贈呈したが、彼は丁重に断った。

その後、王中丞は再び鮮明な夢を見た。帝王はにこやかに王中丞に言った。「過去の過ちを悔いて、懸命に行いを正そうとする生き方は評価できる。福はお前の元に返ってくる。お前が科挙に合格するのは来年の予定だったが、今年にしてやろう」。そして、引き続き善行を重ねれば、さらに福運は豊かになると付け加えた。

帝王の臣下に案内されて扉を出ると、老人と若い男が立っていた。二人は亡くなった未亡人の夫と義父で、女性と子供を助け、財産を守ったことに感謝の意を表した。老人は王中丞に子供がいないことを知ると、息子を指差して言った。「私のせがれを、あなたの息子として生まれ変わるよう手配いたしましょう」。そこで、王中丞は夢から覚めた。

夢のお告げどおり、王中丞はその年に科挙に合格し、彼の妻には息子が生まれた。利発な息子は成長すると、一番の成績で科挙に合格し、出世したという。

(翻訳編集・郭丹丹)