中国人気紙「急成長を遂げた」鄧小平氏の親族企業を報道「赤い貴族にも反腐敗のメス」

赤い貴族」を高級幹部に据えている「安邦保険集団」は反腐敗のターゲットになっている可能性が出ている。わずか10年で総資産が設立当初の5億元から昨年の7000億元に膨れ上がるなど急成長を遂げた同集団だが、経営陣に関する情報は少なく、謎に包まれている。このほど、中国人気紙・南方週末は同集団の総裁で故鄧小平氏の孫娘の婿・呉小暉氏の経歴を詳細に報じ、波紋を広げている。赤い貴族の中でも特別な存在とされる鄧小平親族に踏み込んだ異例な報道に、米在住の評論家何清漣氏は、習近平指導部が赤い貴族にも反腐敗のメスを入れる可能性が高いと分析した。

 安邦保険集団は2004年に設立され、保険から資産管理までさまざまな業務を行う総合保険グループで、中国内に3000以上の店舗を持ち、総資産は7000億元を超す。同社は昨年10月、米ニューヨークの高級ホテル、「ウォルドルフ・アストリア」を買収するなど海外買収を繰り広げ、存在感を示してきた。さらに、同集団の経営陣に故陳毅氏の陳小魯氏や、朱鎔基元首相の長男などそうそうたる顔ぶれが並ぶ。「銀の匙をくわえて生まれてきた」と揶揄される安邦の「赤い人脈」は人々の関心を呼んでいる。陳小魯氏はかつて香港紙苹果日報のインタビューで、「紅貴族二代目人脈は安邦の発展の助けになった」とも語っていた。

 南方週末は1月29日、記事「安邦路線」で同集団の3人の重要人物について報じた。これまでメディアにほとんど報じられていない総裁呉小暉氏は、1966年に浙江省の農村で生まれた田舎者だったにもかかわらず、「ハンサムで口が達者」で3度結婚を経験した。そのうちの2度は高官子弟との結婚で現在の地位を築いたという。1度目の離婚後、同省の副省長だった盧文舸氏の娘と結婚し、盧氏の力を借りて実業家に転身した。安邦保険集団もその間に設立された。3度目の結婚相手について同記事は「ある元国家指導者の孫娘」と述べるにとどまった。もう一人の重要人物は「卓という女性」と記述し、明言を避けた。この女性こそ故鄧小平の孫娘で呉総裁の妻・卓苒氏。3人目の陳小魯氏については、安邦集団が設立して以来、取締役を務め、2014年1月の時点で5割超の株を保有し、同集団の「実際の支配者」と報じた。陳氏は卓氏のビジネスパートナーで、卓氏を呉総裁に引き合わせたのも彼だった。

 陳氏は30日の声明で、報道内容を否定し、自身は「報酬を受けない顧問」に過ぎず、呉氏とは「15年間にわたり協力関係にあり経営戦略の相談に応じていた」と述べ、呉氏が安邦集団の実際の支配者と示唆した。噂されている朱元首相の息子も重役の座についていることを完全否定した。南方週末は2日、公式サイトに「報道に誤りがある」として関係者に謝罪するという書き込みを投稿したが、誤りの詳細について言及しなかった。

 南方週末の曖昧な謝罪について、同紙の元編集長は仏国営ラジオRFIの取材で「圧力があったと考えられる。ただ、一行だけの簡単な謝罪からみれば、大きな圧力ではない」と答えた。「記事を掲載する前に安全確認を行ったはずだ。経済紙・財経もその後関連記事を出したことから、信ぴょう性に問題はない」と掲載は許可を得たものだとの認識を示した。

 

 

太子党と団派の戦い

安邦が一躍注目の的となったのは大手商業銀行・民生銀行の毛暁峰行長(頭取)が1月31日に当局に連行され調査を受けたことと関係している。昨年11月からわずか2カ月で、安邦は同銀行の株を10回にわたって取得し、現在22.51%の株を保有する筆頭株主に躍り出た。民生銀行の株を大量買収した安邦集団の動きについて、時事評論家の章立凡氏は「資本の奪い合いより、太子党と団派のバトルが勃発した」とみている。

 毛行長は昨年末に失脚した令計画前中央統戦部部長と親密な関係にあり、令氏ら高官の妻に勤務実態のないポストを与え、高額な報酬を払っていたとされる。これまで習主席は太子党からの支持を受けながら、胡錦涛前主席が率いる団派と連携して江沢民派と戦ってきたが、団派の中心メンバーである令計画氏の失脚で、太子党と団派の関係に亀裂が生じたとみられる。中央紀律委員会は1月に行われた第5回全体会議で、今後の反腐敗は「国有企業の幹部」「身内のトラ」の取り締まりに重きを置くと明言し、反腐敗の対象が太子党にも広がった。その後、各派閥の亀裂が表面化し、「虎をやっつけなければ、虎に食べられてしまう」という危機感から、今の中国は「どんな状況も生じうる」乱闘の局面にあると章氏は指摘した。

 安邦集団をめぐる一連の動きについて、経済学者の何清漣氏は米VOAの寄稿記事で「赤い貴族のビジネスに反腐敗のメスを入れる可能性があり、安邦はその試金石となる」と分析した。周永康前最高指導部メンバーの失脚もメディア報道が先行していたことから、習近平指導部は赤い貴族という「硬い骨をかじる」用意ができたとの見方を示した。これまで失脚した幹部はいずれも敵対勢力のメンバーで、反腐敗が実質上の粛清になっているという批判を交わす狙いがあると何氏はみている。

(翻訳編集・江音)
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