スーチー氏帰国 人権問題回避に不評の声

【大紀元日本6月16日】5日間の中国訪問を終えたミャンマーの野党党首、アウンサンスーチー氏は14日、帰国した。世界的有名な民主化運動指導者である同氏は訪問中に中国政府の人権問題に触れてないとみられ、「政治家に変わった」という不評の声がいっそう広まった。

訪問前から、北京在住の胡佳氏など中国人権・民主活動家の間では「世界がかつてスーチー氏を支持したように、彼女に中国政府に声をあげてほしい」との期待が高まっていたが、失望が大きいようだ。米国の海外向け放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、「その投機的な政治姿勢に疑問を感じざるをえない」と遠回しに批判する中国メディアがいた。

VOAによると、国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の中国担当は「スーチー氏の人権問題に対する沈黙は彼女の指導者としての信用を損なった」とコメントした。

その「人権より政治を重視」の姿勢は国内問題にも現れている。ミャンマー国内の少数民族ロヒンギャ族への迫害について発言を控えていることが指摘されている。英紙フィナンシャル・タイムズは同氏解放後のこれまでの5年間の政治活動を「神の講壇から降り、政治の世界に戻った」と酷評した。

ミャンマー国内で迫害に遭っている少数民族ロヒンギャ族の漂流難民、インドネシア沖で5月20日撮影 (JANUAR/AFP/Getty Images)

ニューヨーク・タイムズ紙は今回の訪中について、「民主を促す世界的な代表人物から政権樹立を目指す政治家に変身していることを露呈したか」とし、「人権問題の闘士」という名誉にさらに傷が残った、と手厳しいコメントを送った。

一方、中国共産党の招きで実現した今回の初訪問は、習近平・総書記との会談を除いて、その他の行事はほとんど伝えられていない。中国政府発表によると、会談で習氏の「中国と両国間の協力関係を公正かつ理性的に受け止めるよう、ミャンマー国民に積極的に働きかけてほしい」との注文に対し、同氏は「隣人を選べることはできないが、両国の友好関係は非常に重要である」と述べ、双方は関係強化で一致した。

海外の中国ニュースサイト「博聞社」の報道では、会談でスーチー氏は、拘禁中のノーベル平和賞受賞者劉暁波氏への関心を示したが、習総書記はそれに対してコメントしなかった。

(翻訳編集・叶子)
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