寛容な心に涙した泥棒

東漢の時代、名士・陳寔(ちんしょく)は自分を厳しく律し、機会を見つけては自ら手本を示し、子供たちを教育していた。

大洪水に見舞われた年、多くの村は深刻な被害に遭った。田んぼが流され、大勢の人が飢饉に見舞われ、流民が溢れた。やがて動乱の世となり、盗人が横行した。

ある夜、陳氏宅に入った泥棒は人の気配を察すると、とっさに大黒柱に登り、大梁(おおばり)にへばりついて身を隠した。

その時、部屋の奥から出てきた陳氏は偶然、天井の隙間から服の裾がのぞいているのを見つけた。陳氏は泥棒がいることをすぐに見抜いたが、捕まえようとはせずに、子供たちを集めた。全員が揃ってから、陳氏は厳しい口調で言った。「子供たちよ、よく聞きなさい。いかなる時でも、高尚な品格をなくしてはならない。如何なる口実があっても、決して不道徳なことをし、悪の道に染まってはならない。分かるかな?」「生まれつきの悪人はいない。しかし、己を厳しく律しなければ、徐々に悪い習慣を身に付け、悪人になってしまうものだ。まさに大梁にいる者がそうではないか。決して一時の貧しさから志を失ってはならない」と、まるで泥棒にも言い聞かせるかのように、子供たちに話した。

陳氏の言葉を聞いた泥棒は驚き、すぐに大梁から降りてきた。「あなたの仰る通りです。私は過ちを犯しました。二度と同じ過ちを繰り返しません。どうかお許しください」と泥棒は陳氏に土下座をし、謝罪した。

陳氏は、「あなたは悪人には見えません。きっと、貧しい生活に追い詰められたのでしょう。まだ改めることはできます」と諭し、さらに、数反の絹の織物を泥棒に贈った。泥棒は涙を流して頭を垂れた。その後、この地区では泥棒が出たという話を聞かなくなったという。

(翻訳編集・潤)

関連記事
1271年、モンゴルのフビライ・ハンが元を建て、初めての漢民族以外の皇帝となりました。その後、数十年にわたり、中国はかつてない規模の帝国となり、元は文化の多様性と国際貿易の栄えた時代となりました。
明の最初の皇帝・太祖の生い立ちは、朝廷生活とはほど遠く、彼は朱元璋と名付けられた農民の子供でした。彼は最初、僧侶の道を歩みましたが、モンゴル主導の元が朝廷内の闘争で弱体化する中で反乱軍に参加し、まもなく右に出るもののいない軍事家として才気を発揮することとなりました。
胃酸逆流の症状を抑える等、一般的な胃腸薬を服用している人は、知らず知らずのうちに偏頭痛を発症するリスクを高めているかもしれません。 このような一般的な治療薬と偏頭痛との関連性について、アメリカ神経学アカデミーが発行する「Neurology Clinical Practice」オンライン版に掲載されました。研究では、胃腸薬が偏頭痛を直接引き起こすとは断定されていないものの、両者の間には何らかの関連があるのではないかと考えられています。
子供のいじめ、自殺、暴力・・・昨今、心の痛むニュースが後を絶えません。生まれてきた時は、誰もが純粋で善良だったはずなのに、何が子供たちを悪へと走らせるのでしょうか。人生には学校の教科書から学ぶことのできない、大切な価値観があることを子供たちへ伝えることが重要です。将来を担っていく子供たちに、ぜひ読んでもらいたい物語を厳選しました。
さまざまな予測不可な症状に悩まされていませんか?一つの症状が改善されると、また別の症状が現れると感じていませんか?それはマスト細胞活性化症候群(MCAS)が原因かもしれません。