分析=中国、一党独裁を解く「大統領制」移行はあるのか(2)

この記事は、分析=中国、一党独裁を解く「大統領制」移行はあるのか(1)のつづきです。


 江沢民派による言論統制

今年に入り、習近平主席は、中国共産党中央政治局常務委員会制度(常委制)を終了し、「大統領制」移行の可能性が浮上した。党内の専門家も、大統領制について触れているものの、共産党の権力にしがみつく江沢民派は、これに反対するため、全人代で周近平氏をけん制したり、言論統制を強めたりしている。

7月13日、かかんな報道で知られる民間誌「炎黄春秋」の管理権が、党内ナンバー5で江沢民派の劉雲山・常務委員に移った。中国指導部の元関係者によると、劉雲山氏が担う国家新聞出版広電総局は、この民間誌の社長、編集長などの管理職を辞任させ、代わりに政府職員を就かせた。劉雲山氏が、言論統制を強めて習近平氏に対抗しようとする意図が読み取れる。

 習近平氏と江沢民派の闘争の中心

習近平氏と江沢民派の闘争の要は、中国国民の数千万人の人生にからむ、目下迫害政策にある法輪功だ。1999年7月20日、当時の中国共産党総書記と国家主席を兼任する江沢民は、7000万人の共産党員数を超え、1億人に達した気功法・法輪功の数を恐れ、弾圧を始めた。おびただしい数の法輪功の学習者が連行・拘束され、収容所では「思想の変更」を強要され、拷問を受けた。

収容所の法輪功の学習者は、臓器移植向けに強制的に臓器を摘出され、これにより国が莫大な利益をあげているとの疑いが、独自調査を行った国際調査チームにより指摘された。調査結果をうけて、米国の下院議会では6月、中国当局が国家ぐるみで行っている法輪功学習者に対する強制的な臓器摘出を非難する議案を、満場一致で通過させた。

習近平氏は法輪功の迫害政策について、具体的な言及はないものの、積極姿勢でないことはうかがえる。国家主席に就任して以降、法輪功学習者が強制留置されていた労働教養制度を廃止し、弾圧を率先していた公安部副部長で江沢民派の李東生を逮捕した。また、4月には党内最高レベルの会議のなかで、「宗教信仰の自由」を強調し、法治による宗教問題の解決を図る意向を示している。

法輪功への「ジェノサイド罪」で、中国の最高人民法院(最高裁に相当)宛の江沢民告訴の署名は世界で約150万人分に上る。

 安定した中国政府の指導部 日本やアジア各国に重要

中国中央指導部のメンバーたちは、腐敗極まり、自らの利益のために国の法律や党規を用いて、内部抗争を続けている。その結果、中国政府は混乱におちいりやすく、外国企業の中国における投資や経営の保障をすることが困難だ。例えば、1990年代から多数の日本企業が中国に進出しているが、2012年の中国における暴力的な反日デモで、日本企業は大きな損失を被った。独禁法違反や労働問題などで、当局が外国企業へ巨額の罰金を科すのはしばしば起きている。

選挙により国のトップが選ばれる「大統領制」が確立すれば、権力争いは少なくなり、安定した社会を築きやすくなるだろう。2014年に習近平氏がフランスを訪問する際、習氏は「中国は平和的で、親切な、文明的な獅子だ」と主張した。その意味するところが実現する日も、そう遠くないかもしれない。

(おわり)

(翻訳編集・揚思/文亮)

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