腸内細菌は群生する植物の花畑(flora)のように見えるので、腸内フローラ「腸内細菌叢」と呼ばれるようになった。最近の研究では 腸内フローラは人の食習慣、体重、感情に影響を与え、痩せやすい、太りやすい体質の形成にも強く関与していることが分かった。

善玉菌悪玉菌

腸内フローラは100兆個以上もあり、その数は人体細胞の数(約40兆)よりも多く、食べ物の消化、吸収、排泄に大きく関係している以外に、免疫系にも強く影響し、健康の維持に深く関わっている。腸内フローラは、善玉菌、悪玉菌、日和見菌などのグループを作って住んでおり、その割合は、遺伝子によって決まっているが、食習慣や飲酒、運動、薬物などによって大きく変化することがある。

ダイエット成功の要

マウスの実験では、腸内の善玉菌を増やせば、マウスの体脂肪やBMIを減らすことができる。米イリノイ大学の研究者は糖尿病の発症リスクの高い男性を対象に行った調査結果によると、腸内の善玉菌が多い時、血糖値のコントロールは正常だが、悪玉菌が多くなると、血糖のコントロールも悪くなり、血糖値が高い状態が続きやすいことが分かった。

腸内フローラは食べ物に関係があり、食事に糖質や動物性脂肪、動物性たんぱく質が多く、野菜などが少なく栄養バランスも悪く、一部栄養素の不足が生じると、お腹いっぱい食べていたとしても脳はやはり空腹感を感じる。また、悪玉菌が多くなると、うまく消化、吸収できないので、バランスの良い食事を食べていたとしても、やはり空腹感を感じやすい。脳は長時間空腹感を感じると、飢餓状態と判断し、エネルギーを体脂肪として蓄えようにする。それで、痩せたい人には、食べ物の量を制限することより、善玉菌を増やし、悪玉菌を減らすことこそ、ダイエット成功の要かもしれない。

腸内細菌は精神状態にも影響

腸内フローラに関する研究が進むにつれて、腸内フローラが精神にも強く影響を与えていることが確認されつつである。精神の安定、楽しさ、嬉しさと関係する神経伝達物質のセロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれている。そのセロトニンを保有するのは、脳が2%、腸が90%を占めている。うつ病患者の腸内フローラと健康な人の腸内フローラをそれぞれマウスの腸内に移植した実験の結果、うつ病患者腸内フローラの移植を受けたマウスは健康な人の腸内フローラの移植を受けたマウスより、うつ状態が多く見られることが分かった。

腸と脳の関係

腸脳相関」という言葉が示しているように、腸と脳は神経やホルモンを通じて互いに作用する。それで、腸は第2の脳とも言われている。マウスの実験では、2週間マウスにカップ麺やスナック菓子などの加工食品や動物性食品、糖質などの餌を与え続けると、マウスの空間記憶(場所を覚える記憶)に障害が現れることが分った。他の研究でも、 高脂肪の餌を与え続けて、肥満状態になったマウスの腸内フローラを健康マウスの腸に移植したら、健康マウスにも空間記憶障害が現れることが確認できた。

善玉菌を増やす方法

腸内フローラは食物を餌にして繁殖しており、食事の種類によって、善玉菌と悪玉菌に対する影響が異なるので、山芋、ごぼう、オクラ、アボガド、納豆、きのこ類、海藻類などの食物は豊富な水溶性食物繊維を含んでいるので、善玉菌の増殖に良い影響を与える。故に善玉菌を増やすため、加工食品や動物性食品を避け、飲酒を控えるとともに野菜や海藻類、発酵食品を多めに食べ、適度な運動をすることは重要。工夫をして食生活を変えれば、腸内フローラの環境を良い状態に向けて変化させていき、早くて2週間位で実感することができる。

(翻訳編集・林書羽)