【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

1日15分の腹部マッサージで便秘の軽減に効果

カシー・マドセンさんは、過敏性腸症候群(IBS)と不安障害に苦しんでいた時期、時おり受けていたマッサージ療法が全身のリラックスに役立っていることに気づいていました。しかし、彼女のマッサージ師が「腹部マッサージ」を提案してきたとき、それは初耳でした。

マッサージを始める前に、彼女と施術師は腸の状態について話し合い、彼女が頻繁に便秘をしていることが話題になりました。

「彼女は『やってみると良いかもしれない』と言ってくれました」とマドセンさんはエポックタイムズに語ります。「マッサージの後、少し楽になった感じがしました。魔法のような治療というわけではありませんが、効果があるときもあれば、そうでもないときもあります」

現在、腸の健康と栄養を専門とする栄養士として活動しているマドセンさんは、腹部マッサージが食事の役割を代替するものではないと認めつつも、「マッサージには症状を緩和する力がある」として、クライアントにも積極的にその情報を共有しています。

「ストレスや緊張を感じたときに、自然と体の姿勢が変わりますよね。腸もそれと同じように反応します。実際には、腸内の神経の影響で、もっと敏感に反応することもあるんです」と彼女は話します。
 

腹部マッサージの仕組み

腸の神経は、食道から直腸までの消化管の壁に分布しており、これらの神経が筋肉の収縮を調整する役割を担っています。この収縮運動は「蠕動(ぜんどう)」と呼ばれ、中枢神経系とは独立して働くことができます。つまり、腸の神経系は私たちの感情の影響を受けやすいのです。

腹部マッサージは、消化に関連する筋肉を手で緩めたり伸ばしたりすることによって、不快感を和らげ、排便を促す可能性があります。ブルックスリハビリテーションセンターの理学療法士で、骨盤の健康を専門とし、結腸マッサージの訓練も受けているジリアン・ミラー氏によれば、腹部マッサージは下剤や便軟化剤の代替手段として特に有用です。これらの薬は胃腸に強く、長期的な影響を及ぼすことがあります。

1431人の成人患者を対象に行われたメタアナリシス(統合解析)および系統的レビューによると、1日15分間の腹部マッサージは排便頻度を大きく増加させ、腸内の移動時間を短縮し、筋肉の緊張、腹部の不快感、膨満感、不完全排便感、直腸の便閉塞といった便秘に伴う症状を改善する効果が確認されました。この研究結果は『国際看護研究ジャーナル(International Journal of Nursing Studies)』に掲載されています。

研究では、腹部マッサージが週あたりの排便回数を明らかに増やし、腸内移動時間を短縮し、便秘の諸症状を改善した一方で、下剤の使用量には明確な減少は見られませんでした。
 

腹部マッサージを試すべき人とは?

理学療法士のジリアン・ミラー氏はエポックタイムズに対し、「一時的または慢性的な便秘に悩み、手でマッサージを行える人であれば、誰でも腹部マッサージを試してみる価値があります」と語っています。初めてで不安を感じる人は、訓練を受けた専門家によるマッサージを少なくとも一度体験することが勧められます。

便秘は非常に一般的な症状で、成人の約16%、60歳以上では約33%の人に影響を与えています。便秘の症状には、週に3回未満の排便、硬い塊状の便、排便時の痛み、便が出切っていない感覚などが含まれます。

極端なケースでは、肛門周辺の組織が腫れたり裂けたり、結腸内に硬便がたまったり、直腸の一部が肛門から突出する「直腸脱」などの合併症を引き起こすこともあります。

ミラー氏は、便秘は入院患者や、手術後・大けがの後に自宅で療養している人に特に多く見られると指摘しています。運動不足や、腸の蠕動運動を抑える薬の使用が、便秘をさらに悪化させる原因となります。

「医療の現場で『マッサージ』という言葉を使うとき、それは一時的に痛みや不快感を和らげるための技術を指します」とミラー氏は述べ、「長期的には、なぜ便秘が起きているのかを突き止める必要があります。特に、それが慢性的な問題である場合はなおさらです」と続けました。
 

腹部マッサージのやり方

基本的な結腸マッサージはとても簡単で、多くの人が施術者に相談せずに自分で始めることができます。

理学療法士のジリアン・ミラー氏によると、標準的なマッサージの方法では、まず仰向けに寝て、膝を曲げて腹部の筋肉をリラックスさせる体勢を取ります。

マッサージの第一段階では、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸の流れに沿って、適度な下向きの圧力をかけながら滑らせるような動作を行います。この動きを5~7回繰り返します。続いて、便がたまりやすい5つの部位に対して、Cの形を描くように押し込む動作を数回ずつ繰り返します。

「手順にはいくつかのバリエーションがあり、S状結腸から始めて逆方向に行う方法もありますが、私は自然な消化の流れに沿って、右側から始めて直腸に向かって進む方法を採用しています」とミラー氏は語ります。「臨床現場では、2つの方向どちらも試してもらい、自分に合った方法を見つけてもらうよう勧めています」

インターネット上には、参考になる動画や図解も多く公開されていますが、中には鏡像(左右反転)になっているものもあります。大切なのは、マッサージを通常は右下腹部から始めて、消化の自然な流れに沿って行うということです。

腸マッサージの方向と5つの圧力ポイント(Shutterstock)

 

なお、腹部マッサージは痛みや強い不快感を伴うべきではありません。損傷のリスクは稀ですが、過度の力や激しい圧迫が内臓に損傷を与える可能性があるという報告もあります。

実際、腹部マッサージにより膵臓が破裂した症例を記録した医学報告では、次のように結論づけられています。「適切な腹部マッサージは、膨満感や便秘の緩和に効果があるが、強すぎるマッサージは腹部内の臓器や組織に生命を脅かす損傷を与える可能性があるため、避けるべきである」
 

腹部マッサージによる全体的な体調調整

腹部マッサージは古代中国の文化に起源を持ち、かつては寺院の僧侶たちが身体、心、感情、そして精神の健康を調えるための総合的な手法として用いていました。この療法は「氣内臓(チーネイザン)」とも呼ばれ、また「道教マッサージ療法(TaoTouch)」と称されることもあり、病気の根本原因に働きかけるものと考えられています。

氣内臓研究所によれば、この技術には以下のような効果があります:

  •  姿勢を整えることで内臓の位置を本来の場所に戻し、最適な機能を回復させる
  • 血行を促進し、瘀血(おけつ)を解消することで免疫力を強化する
     
  • 肝脾不和(肝の機能低下と脾の虚弱)を調整し、消化器の不調を改善する

同研究所はこのアプローチを「功夫」や「氣功」などの実践と結びつけた、身体とエネルギーを統合する方法と説明しています。

「氣内臓の真のホリスティックな方法は、人の全体的な機能を強化することであり、病気と戦うのではなく身体と協力することです。問題だけに焦点を当てるのではなく、身体、心、精神が持つ本来の癒しの力に注目することが、根本からの長期的な回復につながるのです」と公式ウェブサイトには記載されています。

理学療法士ジリアン・ミラー氏は、自分で行う腹部マッサージの実用的な利点として、「自分の体をより深く理解できること」を挙げています。特に、どの部位に便がたまりやすいかを知ることができる点は有益です。さらに彼女は、「これは副作用がなく、低リスクな下剤の代替法としても非常に優れている」と付け加えています。
 

腹部マッサージを促進するためのポイント

理学療法士のジリアン・ミラー氏は、腹部マッサージの効果を高めるために以下のような追加のアドバイスを提供しています:

– 医師から特別な指示がない限り、毎日「体重の半分(ポンド単位)のオンス」に相当する量の水を飲むようにしましょう。特に朝に常温の水をたっぷり飲むのが理想です。たとえば、体重160ポンド(約72kg)の人であれば、1日80オンス(約2.4リットル)を目安に水分補給を行います。

  • 朝の時間帯に運動、散歩、立って身体を動かすことを心がけましょう。
     
  • 強い便意があるときにだけトイレに行くようにします。
     
  • トイレで10分以上座り続けないようにし、力んだり押し出そうとしないようにしましょう。
     
  •  両膝を股関節より高く保ち(股関節置換術を受けた人を除く)、体を少し前傾させて、リラックスしながら均等な呼吸を保ちます。

ミラー氏は、腸の機能障害は時に非常に複雑で深刻な場合があり、医師や骨盤健康の専門家による診察が必要なこともあると指摘しています。

とはいえ、多くの患者は自己マッサージや、他の理学療法で学んだテクニックを用いることで、目覚ましい健康改善を実感しています。ミラー氏は、「新規の患者の中には数週間も排便がなかった人が、施術中に腹部マッサージを受けることで、診療所を出る前に排便があった例もあります」と述べています。

「腹部マッサージを通して、正しい方法で行えば、必ず結果が得られると実感してもらえるのです」と彼女は語っています。
 

その他のアプローチ

マッサージはひとつの技法ですが、専門的な訓練を受けた理学療法士は、骨盤底筋への手技療法など、さらに幅広い技術を用いることができます。これには「トリガーポイントリリース」や「器具を用いた軟部組織マッサージ」などが含まれます。トリガーポイントリリースとは、緊張をほぐすためにツボや筋肉の硬結部分に継続的な圧力を加え、血流を促進し、本来の働きを失っている可能性のある筋肉機能を回復させる技術です。

患者は、アメリカ理学療法専門委員会のディレクトリを通じて、骨盤の健康を専門とする理学療法士を探すことができます。ジリアン・ミラー氏によれば、多くのプライマリケア(一般診療)医も地元の骨盤健康の専門家を紹介できるとのことです。

「私たちが行う多くの施術と同じく、患者さんに何度も通い続けてもらうことが目的ではありません」とミラー氏は語り、「必要な道具をすべて提供し、自分自身でケアができるようになってもらうことが私たちの目指すところです」と強調しています。

(翻訳編集 華山律)

イリノイ大学スプリングフィールド校で広報報道の修士号を取得。調査報道と健康報道でいくつかの賞を受賞。現在は大紀元の記者として主にマイクロバイオーム、新しい治療法、統合的な健康についてレポート。