北京のキオスクにて4月4日、並べられた新聞や雑誌のなかにはトランプ氏が表紙を飾るものも(GREG BAKER/AFP/Getty Images)

在米専門家に聞く北朝鮮問題をめぐる米中首脳会談(2)

この記事は、在米専門家に聞く北朝鮮問題をめぐる米中首脳会談(1)のつづきです。

 米の先制攻撃はあるのか?

現在トランプ政権の内部では、トランプ氏の娘婿のジャレッド・クシュナー氏をはじめとする中国寄り派と、スティーブ・バノン大統領首席戦略官をはじめとする対中強硬派がいる。トランプ氏に強い影響力を与えている娘のイヴァンカ・トランプ氏は2月、ワシントンにある中国大使館の旧正月を祝うイベントに参加したこともあった。

米大統領選挙において、対中強硬派はトランプ氏の当選に大きな貢献をした。トランプ氏は選挙中、貿易や為替などの面で中国当局を痛烈に批判した。しかし、新政権が発足した後、トランプ氏の対中姿勢はソフトになり、台湾問題に関して中国当局の「一つの中国」を尊重すると表明したほか、為替に関してまだ中国を「為替操作国」に認定していない。

今後、トランプ政権で対北朝鮮への先制攻撃があるかどうかは、中国に対して姿勢が全く違うトランプ氏のブレーンの間の力関係が関わってくるだろう。

トランプ氏のブレーンが最も危惧するのは、米国が北朝鮮に先制攻撃をすれば、中国側が必ず出兵し、米中両国間で起きた戦争のようなことが再び起こるということだろう。

中共は、米国の武力行使で北朝鮮が政権崩壊し民主国家となり、西側諸国の勢力の阻害がなく中国の国境に迫り、中共政権を揺るがす非常に大きな脅威となることを警戒している。そのため中共は、北朝鮮が数多く核実験を行い、北朝鮮と国境を接する地域が放射能汚染されていても、北朝鮮の政権維持をしていくつもりだ。

 トランプ大統領はどう交渉するのか

トランプ大統領は米中首脳会談で、北朝鮮への先制攻撃に関して中共に対して出兵しないよう交渉する場合、中国との貿易・為替問題や台湾などに関して一定の譲歩を示す可能性が高い。

習近平政権あるいは中共党内最高指導部の他の高官が、その米側の提案を受け入れず、北朝鮮が米国の攻撃を受けた後に中共も出兵すると押し通すと、過去の朝鮮戦争のように朝鮮半島において再び戦争が起きるだろう。その場合、軍事力が米国より下である中共は必ず敗北するだろう。

ただ、現在最も核心的な問題は、トランプ政権は北朝鮮に対して先制攻撃をするかどうかにある。このような具体的行動がなければ、米国、日本、韓国、中国など関係国がまた6カ国協議のように、毎日議論し、口先の闘争を繰り返す現状から抜け出すことができない。もしかすると各国が議論を続ける中、北朝鮮がさらに核やミサイル技術を向上させて、ある日、米国本土まで大陸間弾道ミサイルを発射するかもしれない。これが現実となって、米国がやっと武力行使に踏み切っても、もう時間的に遅いかもしれない。

就任前のあらゆる政策において、相手に譲らない強い姿勢だったあのトランプ氏は大統領就任後丸くなっている。例えば、トランプ氏は中共に対抗するため、ロシアとの協力を強めていくつもりだったが、しかし米国内の親中派が、トランプ氏がロシアと密かに通じ合っていることを追及した。そのため、トランプ大統領が最も信頼を寄せていた側近を失ってしまった。

一方、米国の親中派政治家はほとんど反ロシアで、ロシアを米国の最大の敵とみなしてきた。この認識の下で、米国の中共に対する警戒と圧力が緩められた。

現在の状況をみれば、トランプ政権はまだ北朝鮮に対して、先制攻撃をする可能性が低い。ただ、金正恩が核実験、大陸間弾道ミサイル発射など挑発行為を一段と加速し、米国内の各派の間で「中共は怖くない。北朝鮮に対し武力行使を行うべきだ」という認識が一致すれば、朝鮮半島ないし東アジアにおいて大きな変化がみられるだろう。

(おわり)

(翻訳編集・張哲)

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