中国大手、海外企業買収を相次ぎ中止 当局が規制強化か
多角的な事業をもつ中国大手の楽視グループ(LeEco)はこのほど、米大手テレビメーカーのビジオ(Vizio)社の買収を取りやめると発表した。中国共産党政権が資金の国外流出を厳しく規制しはじめていることが主な原因だとみられる。専門家は今年、中国企業の対外投資は低迷期に入ると予測した。
中国でインターネット事業、スマートフォン、電気自動車製造、電子商取引など幅広く事業を展開するLeEco社は昨年7月、総額20億ドルの同買収案を公表した。同社の幹部はこのほど、撤回の理由について「中国の政策上の要因」と述べるにとどまり、詳細を説明しなかった。両社は今後業務提携に関する協議にきりかえるという。
今年に入ってから、同様の事例が複数報じられた。
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