中国当局、韓国映画「タクシー運転手」の議論を禁止、六四天安門事件連想で

中国当局は3日、中国国内インターネット上で今年8月2日に韓国で上映された映画『タクシー運転手』に関連する情報や評論を削除した。映画の内容が「六四天安門事件」を連想させることが原因だとみられる。中国当局は18日開催予定の党大会の前に、国内の言論統制を強めている。

『タクシー運転手』は1980年韓国光州で起きた民主化運動、いわゆる「光州事件」を題材にし、実話を基にした作品だ。韓国では8月上映以降、観客動員数はすでに1000万人を突破した。韓国映画で1000万人の大台を突破したのは同作で15作目となる。

学生を後ろから襲った戦車

六四天安門事件の体験者が語る


 

中国国内では同映画は上映されていない。しかし中国人ネットユーザーらは「六四天安門事件」を絡めながら、熱く議論を交わされていた。

映画や書籍などのレビューが投稿できる情報コミュニティサイト・豆瓣では3日までに、同映画に関するレビュー数が3万件以上で、映画評価点数は10点満点中9.1点となった。

香港紙・蘋果日報の報道によると、中国のネット検閲当局が国内各サイトに対して、同映画に関するすべてのレビューや評価点数、また同映画の放映を削除するよう要求した。また「タクシー運転手」や「光州」などキーワードでの検索も不可になった。豆瓣映画では3日、『タクシー運転手』のページが突如削除された。

これに対して、中国のネットユーザーらは「韓国が歴史を反省しているのに、われわれはまだ恐怖の中に生きている」「光州事件は天安門を思い出させた。市内の電話回線が全部遮断され、市外への出入りが制限された。すべての人は政府の言い分しか聞けないし、うわさや推測などに頼るしかなかった。―この感覚に覚えがあるよね?」と批判のコメントを投稿した。

(翻訳編集・張哲)

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様々な数字は残酷な一面もあわせ持っている。まるで麻酔薬のように人々の感覚を麻痺させる力があるのだろう。バイオレンス映画を見続けると、血なまぐさいシーンを見ても何も感じなくなるのと同じように。そうして、見る人はその自覚もないまま、暴力という毒に侵されてゆく。