春を見つけた娘 

久しぶりに、女流画家である友人と会った。近々個展を開く彼女はアトリエにこもりっきりだったが、彼女は自分の作品の中でどれか一つ、気に入った絵を選んでほしいと言った。私は絵の専門知識など全くなかったが、彼女の作品の中に描かれていた人物像に興味を覚えた。

 ひとつひとつの作品を眺めていると、ある作品に目が止まった。絵の中には、顔に深いしわが刻まれ、物寂しく虚ろな眼差しをした一人の老人が樹の下に座っている。「この絵は...」と言いかけると友人は、「ああ、それは父なの。3年前にここを訪ねて来た時に、適当に描いたものなのよ。それよりも、他の新作を見てちょうだい」と言いながら、「父」の絵を引き抜いて、選ばれなかった沢山の絵の中に投げ入れた。

 私は「父」の絵が投げ捨てられたのを見てハッとした。彼女は幼い時に母親を失い、父親が男手一つで彼女を育て、画家になりたいという夢が実現するよう大学まで行かせてくれた話を、以前彼女から聞いたことがあったからだ。現在、成功を収めた彼女はいとも簡単に「父」を忘れ去ろうとしている・・・私は急に寂しい思いに駆られた。

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