2018年10月、ロンドンにあるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)の社屋(Jack Taylor/Getty Images)

EU、中国サイバー攻撃への対抗策を検討 来年5月までに導入

欧州連合(EU)は、欧州産業における中国からのサイバースパイの脅威に対して、対抗策の準備を進めている。

2人の情報筋は米ニュースサイト「ポリティコ」に対して、企業秘密の保護に関するEU指令案に新たな措置を盛り込むと話した。今期の欧州議会が任期満了を迎える来年5月までに完成させるという。

同紙によると、欧州委員会は10月4日、EU加盟国の専門家、外交関係者、産業界のロビイスト(ロビー活動の専門家)たちと会談した。委員会は、世界四大会計事務所・コンサルタントファームの一角を占めるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)がまとめた調査報告について議論を行った。この調査は、「ヨーロッパの公的機関および民間企業が企業秘密のサイバー盗難に伴うリスクの増加について懸念を抱いている」と指摘した。

調査によると、欧州の製造部門のなかで、企業秘密を狙う産業スパイの手法は、サイバー攻撃が94%を占める。また、この調査によれば、サイバースパイによる欧州産業への影響は、600億ユーロ(約8兆円)に及ぶと推計している。

過去の欧州委員会での報告は、サイバースパイ活動の活発な国として、中国共産党政府を指摘してきた。PwCは、10月下旬をめどにこの調査報告を完了させる。委員会が公表後、その後の行動に移ると述べた。

PwCはまた、欧州連合(EU)と加盟国が中国と、米中会談のような通商会談を開催するよう提案している。PwCの調査によると、欧州内ではイタリア、フランス、ドイツ、オランダの産業部門で働く人々が、サイバースパイに最も懸念を示している。同社によると、なかでも、ドイツは最もこの影響を受けているという。2015年から2017年まで、17%のドイツ企業がサイバースパイの被害を報告している。

PwCは、主要セクター外にある企業にも、サイバー攻撃事案について情報を通知するよう求めた。調査によると、EU全体では60%の企業が同攻撃による危険情報の共有を望んでいるという。

ポリティコによると、EUは、欧州各国政府と比べて、サイバー攻撃と安全保障対策の議論に慎重な姿勢を示していた。この攻撃を追及する権利は、欧州連合ではなく加盟国それぞれにあると考えられていた。

欧州最大のビジネスロビーであるビジネス・ヨーロッパは10月4日の声明で、EUに対して「中国のような敵対的勢力を抑止する戦略」を提示するよう求めた。そのなかで、「外交的な行動や経済的報復が検討に値する」とし、「EUは米国、日本、その他の経済協力開発機構(OECD)諸国と協力して、政治的圧力をかけるよう求めることも可能だ」と付け加えた。

(翻訳編集・佐渡道世)

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