(Photo by David McNew/Getty Images)

春の憂鬱、鍼灸で退治

春は陽気が上昇し、気分も浮き浮きして明るくなります。しかし、この時期に不安、不眠、憂鬱(ゆううつ)になる人もいます。このような患者は、漢方医学から見れば、肝臓の機能が弱い場合が多いです。肝臓は血液を蔵し、疏泄を司ります。疏泄とは、気機の調達を管理し、つまり気の流れをスムーズにさせます。この機能が弱くなれば、気の流れがスムーズにいかず、滞りが生じ、気滞の状態になります。さらに気滞によって、気分がすぐれないなどの症状が表れます。

疏泄機能が弱くなるのは、肝臓に十分な血液を蔵していないことによります。つまり、肝血虚が疏泄機能失調の原因です。さらに肝血虚の原因としては、バランスの悪い食事、夜更かし、テレビの見すぎ、睡眠不足などが考えられます。これらの要素は、いずれも生活習慣の問題です。つまり、憂鬱の裏側に生活習慣の問題が隠れています。その他に、出血、出産、手術なども肝血虚の原因になります。

生活習慣に問題があれば、それを直すことが必要ですが、社会生活の環境によってなかなか改善しにくい場合もあります。漢方では、加味逍遥散、四物湯、甘麦大棗湯、酸棗仁湯、温経湯などを処方します。

▶ 続きを読む
関連記事
抗生物質だけでなく、身近な薬も腸内細菌に影響する可能性がある――。中医学では胃腸を「土」にたとえ、体を育てる基盤と考えてきました。腸の乱れを別の角度から見直すヒントです。
冬になると腰や膝が冷え、関節が動かしにくくなる――。中医学では、こうした不調は体の内側の冷えと関係すると考えられています。かぼちゃと小豆の「いとこ煮」は、巡りを整える養生食として親しまれてきました。
抜け毛や白髪は年齢だけの問題ではないかもしれません。中医学では、髪の状態は「腎のエネルギー」と深く関係すると考えられています。下半身の簡単なストレッチが、髪の健康を支えるヒントになる可能性も。
冬は気分の落ち込みや筋骨の弱りを感じやすい季節。チンゲン菜・しいたけ・厚揚げを組み合わせ、肝の滞りをほどき腎を養う冬向きの養生料理を紹介します。
現代科学と中医学の知恵をつなぎ、ポリフェノールが炎症や老化にどう働くのかをわかりやすく解説。お茶や果物が「巡り」を整える理由が腑に落ちる一読の価値ある内容です。