ミャンマーのカチン州難民キャンプ近くのキリスト教会で、赤ちゃんを抱える若い女性(Lauren DeCicca/Getty Images)

中国国境でミャンマー女性の人身売買、性奴隷や出産目的=HRW

人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が3月21日に発表した調査報告によると、人身売買業者がミャンマーと中国との国境地域カチンから、女性と女の子が後継を生む目的で中国農村部に売られ、軟禁されている。女性たちはまた、性奴隷として虐待されている。

112ページに及ぶ『子どもを産んだら逃がしてやる』と題する報告書は、人手不足のために子どもを求める中国農村部の需要を満たすため、ミャンマーの女性が中国に「」として人身取引されていると指摘した。

この報告はおもに、人身売買された37人の女性、ミャンマーの3人の犠牲者の家族、政府高官、警察、地元住民などにインタビューを行った。

報告によれば、中国に移送されたミャンマーの女性は、一つの部屋に閉じ込められて強姦される。妊娠し、出産することを強要されている。16歳の時に義理の姉妹を通じて中国に売られ、のちに脱出することができた女性が、HRWの取材に語った。「1~2カ月、部屋に閉じ込められていました。たくさん泣きました…毎日、食事を運んでくる中国人の男性に、そのたびにレイプされました」

カチン州とシャン州にはミャンマー軍とカチン独立軍による紛争があり、2011年以後、少数民族など10万人以上の難民が発生した。内戦で男性が戦闘に参加するために、女性は家族を養う唯一の稼ぎ手となっている。

報告では、女性たちは人身売買業者らに「中国で良い仕事を見つけられる」と騙され連れ出されている。取引額は1人当たり3000~1万3000ドルで、中国の家庭で性奴隷として扱われる。

HRW報告書共同執筆者ヘザー・バール(Heather Barr)氏は、政府からの支援も受けられない女性らは、生計を立てることが難しく、人身売買の犠牲になりやすいという。また、中国とミャンマーの両国国境の法執行機関も黙認していると指摘する。

中国共産党政権が1979年から2015年まで実施した人口統制策「一人っ子政策」により、男女比1.3:1という不均衡をもたらした。研究者らは結婚適齢期の男性3000万~4000万人が、中国人女性を見つけられないと推定している。

ミャンマー政府によれば、「妻」として中国に売られたミャンマー人の女性は226人と推計している。しかし調査したHRWは、実際はさらに多いと見ている。

HRWは、カチン独立機関の職員を含む中国とミャンマーの警察当局は、人身売買された女性や女児を取り戻そうとせず、助けを求める被害者家族を無視していると指摘する。また、中国警察に助けを求めたミャンマー人女性が、入国管理法に違反したとして投獄された例もあるという。

HRWのバール氏は、ミャンマーおよび中国政府、そしてカチン独立機関に対して、人身売買に関わる犯罪者の訴追、被害者支援など、このミャンマーの女性取引問題の停止に取り組むべきだと主張する。

(翻訳編集・佐渡道世)

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