92歳の認知症患者を手荒に扱う看護師  裁判所は「虐待」と認めず

「母は明らかに苦しみ、手を上に上げて自分の身を守ろうとしていました。」エド・ロビンスは、苦しい胸の内を告げました。オーストラリアのパースにあるモリソンロッジ介護施設でのことです。

エドは、92歳の実母ジーンの体に打撲傷や裂傷を見つけ、介護スタッフの虐待を疑い、母の部屋に隠しカメラを設置しました。予感は的中しました。認知症を患い、数週間前に足を骨折したか弱い母親が、二人の看護師に押さえつけられてぞんざいに扱われる姿はカメラが捉えました。隠しカメラによる撮影は3週間続き、後にABCテレビのドキュメンタリー番組で取り上げられました。

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エドの供述によると、看護師たちがジーンをベッドに押さえつけて、骨折した足をベッドの鉄柵に乗せて、テディベアのぬいぐるみをジーンの顔に投げつけたりしていました。ジーンは、時に「髪を引っ張らないで!」と叫び、看護師を自分の手で払いのけようとしていましたが、看護師は笑っていました。また、ジーンが20分もの間、一人床に直接寝かされていたこともありました。

エドがモリソン・ロッジ介護施設の現場責任者に隠しカメラの内容を告げると、その責任者は速やかにパース警察署に通報し、グレンダ・ルア(40歳)とルッツ・フリーマン(63歳)が虐待の疑いで起訴されました。二人は2016年9月~10月にかけてジーン・ロビンスに対して行った12回にわたる虐待行為は確認されれました。2人は職を失うことになりました。

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しかし、2名の被告は、2019年初頭、すべての罪状について無罪判決を言い渡されたのです。判事は、「看護師たちは忙しく走り回り、ジーンはしばしば暴力的で、介護スタッフを罵倒していたと思われる。扱いにくい高齢者は扱いにくい子どもと同じで、仕事をまっとうするためには力に頼るのもやむを得ない」と述べました。さらに判事は、力の加え方がもう加減すべきだったと述べたうえ、評決に値する正当性が罪状に見られないという決定を下し、グレンダに17,000ドル、ルッツに20,759ドルの罰金を科しました。

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当の看護師たちは、悔い改める態度を示すことがなく、「自分たちは悪者ではなく、犠牲者だ」と訴えています。「私たちから職を奪うのはフェアではない。私たちはケアワーカーとして人々のために重労働をしている」とグレンダは主張しています。

オーストラリア高齢者ケア品質機関 (Australian Care Quality Agency) は、モリソン・ロッジへの新規入居者に対する政府補助金を3ヶ月間停止しましたが、モリソン・ロッジの認証評価はすぐに100%に回復しました。

ジーンはいまだにモリソン・ロッジ介護施設にいます。エドは、隠しカメラを設置したままにしておくことにしました。「オーストラリアでは実際になにが起きているか理解している人があまりいないと思います。すべての部屋にカメラを設置すべきです」とエドは主張しています。

(大紀元日本ウェブ編集部)