【紀元曙光】2020年1月9日

利休百首という、千利休(1522~1591)の教えを分かりやすく和歌にまとめたものがある。
茶道に関心がなくても、万事に通じる心構えとして拾い読みすると、なかなかおもしろい。現代語風になおし、漢字をあてて以下いくつか引用する。
▼「その道に入らんと思う心こそ、我身ながらの師匠なりけれ」。入門しようと思う心が肝心なのである。その学ぼうとする意欲が、自身の師匠でもあるからだ。
▼「習いつつ見てこそ習へ、習はずに良し悪し言うは愚かなりけり」。茶道は、本当に学ぶ気持ちをもって、見て習いなさい。習いもしないうちから、あれこれ評論家ぶる人は愚かですぞ。
▼「恥を捨て、人に物問い習うべし、これぞ上手の基(もとい)なりける」。恥ずかしいと思う気持ちを捨てるのです。分からないことは先生に聞いて、よくよく精進しなさい。この心構えが、達人上手になるための基礎なのですよ。
▼茶が、中国から日本にもたらされたのは、古くは9世紀の遣唐使のころらしい。当時は、嗜好品ではなく薬用の意味がつよかった。12世紀に、日本の臨済禅の開祖となる栄西(えいさい)が入宋留学から帰国した際、茶の苗木を持ち帰ってきた。以来、座禅時の眠気を覚ますため、喫茶の習慣が広がった。
▼そして「わび茶」の完成者、茶聖・利休の登場である。その教えは、点前のノウハウばかりではない。「灯火に油をつがば多くつげ、客に飽かざる心得と知れ」。正客をもてなす亭主の、灯火に込めた細やかな心遣いが、日本伝統文化の真髄でもある。年の初めに当たり、学ぶ気持ちも新たにしたい。