【紀元曙光】2020年2月26日

あっしも落語好きなもので、といっても寄席へいく機会は年に何べんもありゃしませんが、近頃おなじみのYouTubeなんてぇもんで、もう鬼籍に入られた名人、師匠の一席を拝聴してるって、こういう訳でござんす。

▼あまり脱線すると読者諸氏の顰蹙を買うので控えることにする。自分の好みだが、やはり江戸落語が、いい。上方落語も、もちろん面白いと思うのだが、東京ものの筆者には、どうしても異国の芸能のように思えてしまう。

▼2002年に亡くなった5代目・柳家小さん師匠は、生まれは長野市だが、小学校時代から東京の千代田区麹町で過ごした。大正期に入ってはいたが、江戸や明治の香りが残る東京で育ったことが、後の名人芸の基盤となったことは想像に難くない。

▼小さん師匠の映像を見ていて思うのだが、ご老体でありながら手が大きく、着物の袖からのぞく手首や腕が、実に太くて逞しい。さすが範士七段の剣道家であるなあと、落語以外のところにも気がついて、これまた楽しい。

▼そんな大師匠がまだ前座の頃。昭和11年(1936年)2月26日未明に、陸軍の一部の青年将校がクーデターを起こす。その二・二六事件の「反乱軍」のなかに、二等兵だった小さん師匠がいた。その場で落語の「子ほめ」をやらされたが、一触即発の緊張感のなか、誰も笑わなかったと後年語っている。

▼小さん師匠の「時そば」で蕎麦をたぐる芸は天下一品といわれる。いやいや、「うどん屋」の売り声「なぁ~べやぁ~きうどん」も、おいしそうな湯気が上がっていて絶品でしたよ。お後が、よろしいようで。

▶ 続きを読む
関連記事
身近な卵が、実は脳や筋肉、目の健康まで支える完全栄養食だと知っていますか?最新研究と実用的なコツから、卵の本当の力と毎日の取り入れ方を分かりやすく紹介します。
第一次世界大戦の塹壕で、敵同士の兵士が同じクリスマスの賛美歌を歌い、銃を置いた夜があった。天使ではなく、人の声が「地に平和あれ」を響かせた奇跡の物語
冬の冷えで不調を感じやすい季節に。中医学の考え方から、腎を温め心と脳を守る「にらラーメン」を解説。身近な食材でできる、冬の養生をやさしく学べる一編です。
抗うつ薬は本当に「脳の不調」を治しているのか。元FDA医師が、化学的不均衡説の限界と長期投薬のリスクを指摘し、うつ病治療を根本から見直す必要性を訴えます。
なぜ私たちは、気づかぬうちにネガティブ思考の渦に飲み込まれてしまうのか。脳科学と最新研究から「絶望のループ」の正体をひもとき、抜け出すための具体的なヒントを探ります。