【紀元曙光】2020年3月22日

最近のテレビを見ていて、お二人の日本人女性に、筆者の心が惹かれている。どちらも美しく、心優しい人である。
▼その日、たまたま筆者が目にしたのは『情報ライブ ミヤネ屋』であった。解説ゲストに呼ばれていた専門家は、医師でジャーナリストの村中璃子さんだった。
▼MCの宮根誠司さんが振るテンポの速い質問に対して、極めて的確に、過不足なく、しかも理性的に回答する村中さんに、宮根さんも他のレギュラー陣も聞き入っている。解説する言葉の選び方、間のとり方が絶妙にうまい。視聴者が「聞いてよかった」と安心するような話し方なのだ。
▼小欄の筆者も、言葉を使ってものを書くので、大変勉強になる。なかでも宮根さんが「目からウロコ」と絶賛したのが、村中さんによる「マスクをする意味」だ。ウイルスを遮断するのではなく、「手で、直接口や鼻を触らないために、マスクは有効なのです」。
▼もう一人のすばらしい女性は13歳の中学生、山梨県甲府市の滝本妃(ひめ)さん。自分で貯金したお金で材料を買い、ミシンをつかって612枚の布マスクを手作りした。高齢者や児童のいる施設で使ってほしいと、一枚ずつのマスクに手紙を添えて、山梨県へ寄贈した。
▼私たち一般人が入手可能なのは、医療用の特殊マスクではない。にもかかわらず人々は、マスクを求めて、あちこちの薬局を狂奔しすぎていたのではないか。昔ながらの布マスクでも、村中さんが言われた用途は足りる。手作りマスクに込められた滝本さんの優しい心が、今は何よりも嬉しい。筆者にとっても「目からウロコ」だった。