心からの微笑

私は以前、「心からの微笑」という文章を読んだことがある。それは、生まれつき笑うことのできない女の子の話で、「三つ口」であったために、唇が醜く、心理的プレッシャーから笑えなかったというのだ。私はこの文章に震撼した。私たちの生活の中には、実に色々な、思い通りにならないことがある。それらの煩雑な事柄は、自分が意識的に、または無意識的に作り出した余計な心のプレッシャーが原因だったりするものだが、そんな事で、終日笑顔が消えてしまうこともある。

 心からの微笑は、自然に湧き出るものだ。この種の笑いは、最も真実で、人を動かす。あるスポーツ選手が、競技で失敗した時にこんなことを体験したという。「私は失敗して落ち込んでしまいました。周囲には最早拍手と歓声はなく、嘆きの声しか聞こえませんでした。しかし、顔を上げたとき、私は一人の女性が微笑んでいるのを目にしました。彼女の笑顔に嘲りはなく、ただ理解を示し、鼓舞してくれていたのです。彼女は、心から笑っており、失敗は兵家の常だからと言っているかのようでした。私は彼女を知らなかったのですが、彼女の美しく誠実な微笑は、私の脳裏に焼きつきました。翌年、私は競技でいい成績を収めることができました。それは、競技のとき、あのとき見た彼女の微笑が脳裏に浮かび、私を鼓舞してくれたからです」。

 私は以前、笑うたびに手で口元を隠すようにしていた女性に会ったことがある。後で分かったことなのだが、彼女の前歯は色が良くなく、それで彼女は隠したがっていたのだ。親しくなってから、私は彼女にこう言った。「あなたの微笑はとても素敵よ。あなたが笑えば、周囲はとても快活になる。誰もあなたの歯のことなど気にしないわ」。その後、彼女はその習慣を改め、心の底から笑い、えくぼを見せることができるようになり、周囲はいつも明るい雰囲気に包まれた。

 人生の中でうまくいかないときでも、ゆったりとした気持ちでにっこり笑い、笑いで失意や失敗を隠すのがいい。そうするうちに、愁いは次第に少なくなるだろう。そして、何とかして胸襟を開き、心の底から微笑むようにすれば、自分を励まし、他の人にもいい影響を与えることができ、結果的に、あなたはきっと美しい人になれるにちがいない。

(翻訳/編集・甘樫)