【紀元曙光】2020年5月7日

1971年1月。喜劇王チャールズ・チャップリンが晩年住んでいたスイスの邸宅に、当時30歳の萩本欽一さんがアポなしで訪問。幸い、尊敬する名優に面会することができた。
▼あれから49年。5月7日は萩本さんの誕生日である。「看護師さん、お医者さんに、感謝しようよ。言葉でなく、行動で」。在宅を呼びかける萩本さんのメッセージが今、テレビやYouTubeで流れている。
▼芸能界に詳しくない筆者に、多くのことは書けない。テレビで昔から見てきたままを言うなら、日本人は、萩本欽一さんが大好きなのだ。若い頃の欽ちゃんのコントは、すごかった。舞台を走り、そのまま垂直の壁を駆け上がる(ような)勢いだった。
▼自身に厳しく、相手に優しいので、頼まれた仕事は断らない。信じられないことだが、40年ほど前のテレビのゴールデンタイムは、どの曜日にも、萩本さんの高視聴率番組があった。そのほか、厳しい稽古で、多くの若手を育てた。その若手が将来、いろいろな場所で周囲の人から好かれるようにという、師匠の優しさゆえの厳しさであった。
▼萩本さんの人柄のすばらしさは周知の通りで、小欄に書くまでもない。ただ、今のこのような非常時に、どうすれば各人が「優しさ」を心に持ち、それを自分から相手に伝えられるか、と考えている。
▼チャップリンの『街の灯』で、盲目の少女のために奮闘する主人公の姿が、一つの答えかもしれない。見えないところで、頑張る人がいる。それを想像して、行動で応えるのは私たちだ。欽ちゃんの「感謝しようよ。行動で」が分かる気がする。