【紀元曙光】2020年6月1日
1918年6月1日。日本で初めて、ベートーベンの「第九」が全曲演奏された。
▼場所は、なんと捕虜収容所。イギリスの同盟国として第一次大戦に参戦した日本は、中国山東省に租借地をもつドイツの要塞を攻撃する。1914年10月31日から11月8日の「青島の戦い」では、双方、勇敢に戦い、ドイツが敗れた。
▼翌年1月18日、勢いに乗じた日本は、中立国であった中国(中華民国)の袁世凱に「対華21カ条要求」を突きつける。そのことが、以後の歴史において、中国人の対日感情をわるくする発端となったことは否めない。
▼この点、補足しておく。今の中国人がもつ狂気的な反日感情は、1989年「六四」以後、民主化の火種を根絶したい江沢民が、愛国思想(実は愛「党」)を児童や学生に注入する上で、反日を最大限に利用し、日本への憎悪を意図的に膨張させた結果である。「抗日記念館」などの洗脳施設を増やしたのも、江沢民時代であった。
▼話を戻す。捕虜となったドイツ兵4700余名のうち、約千名が、坂東俘虜収容所に送られた。現在の徳島県鳴門市である。会津人である収容所長の松江豊寿陸軍中佐(のち少将)は、戦争捕虜であるドイツ兵を人道的に扱い、可能な限り彼らの自由を認めた。
▼地元の人々は「ドイツさん」と呼んで、親しんだ。ドイツさんたちも、パン製造など元の職業を生かして、地元民への貢献を惜しまなかった。それにしても、楽器をそろえて練習し、男声だけだが合唱つきの「第九」を演奏する捕虜収容所など、童話の世界としか思えない。102年前の史実である。
関連記事
なぜ私たちは、気づかぬうちにネガティブ思考の渦に飲み込まれてしまうのか。脳科学と最新研究から「絶望のループ」の正体をひもとき、抜け出すための具体的なヒントを探ります。
101歳で運転も世界旅行も現役──栄養学者が語る、遺伝ではなく「7つの生活習慣」こそが長寿の鍵。誰でも実践できるシンプルな秘訣が詰まっています。
毎日使う鍋や食器が、知らずに体へ影響しているかもしれません。がんを克服した教授が実践する「無毒キッチン」の知恵を通して、今日からできる安心な選び方と食習慣を学べる一編です。
金価格が高止まりする中、富裕層は地金を保管するだけでなく、貸し出して収益を得る動きを強めています。金で利息を受け取るゴールドリースは、インフレ対策と資産活用を両立する手法として注目されています。
自閉症は一つではなかった――。最新の国際研究が、早期診断と遅発診断で遺伝背景や発達経路が異なることを解明。支援やスクリーニングの在り方を見直す重要な知見です。