中印国境地帯で通話をしているインド軍の兵士。参考写真(DESHAKALYAN CHOWDHURY/AFP via Getty Images)

中印国境衝突 専門家「戦争の可能性が低い」 米印関係や中共肺炎が背景に

中国軍とインド軍は6月16日、インド北部ラダックの国境地帯で衝突し、インド側の発表ではインド軍の将校や兵士20人が死亡した。中国軍は死傷者の数を公表していない。専門家は、現在、中国当局を取り巻く国内外の環境から、両国軍が戦争になる可能性は低いとの見方を示した。

インドメディアの報道によると、両軍の兵士は鉄の棒や石などを使って乱闘し、双方は発砲をしなかった。同国のアジアンニュース・インターナショナル(ANI News)は情報筋の話として、中国軍の兵士43人が死傷したと伝えた。中印両政府はそれぞれ、相手の軍が先に実効支配線を超えたと主張した。

中国時事評論家の唐靖遠氏は、大紀元の取材に対して、今回の衝突は「冷兵器(火器銃器以外の兵器)を使った小規模な国境戦争に相当する」と指摘した。唐氏は、中国当局が衝突を一方的に引き起こした可能性が高いとの見方を示した。

「中国当局は今、国内で中共ウイルス新型コロナウイルス)の感染の再拡大や、景気の悪化と失業者の急増などの課題に直面している。対外政策においても、米国との貿易戦、『香港国家安全法』の制定で国際社会からの批判と圧力を受けている。当局は、国境紛争で中国国民の当局への不満をそらす狙いがある」

同氏は過去、中国をめぐる国内外の環境が厳しくなった時、中国当局は、反日運動や台湾海峡への挑発行為などを主導したことがあると指摘した。

その一方で、唐氏は中印両軍が戦争状態になる可能性は低いと述べた。今回の衝突で双方の兵士が銃を使わなかったことがその証明だ。「両軍の司令官が衝突による影響を最小限に抑えたいという思惑があったと推測できる」

また、中印両政府はその後の声明において、今後、強硬手段に出る意思を示さなかった。中国外務省の趙立堅報道官は17日、インド政府に対して「対話を通じて事態を収束していく」と呼びかけるにとどまった。

唐靖遠氏は、現在の時勢で、中国共産党政権がインドに戦争を仕掛けるのは「明らかに賢明ではない」とした。インド政府と米政府は近年、米国の「インド太平洋戦略」の下で、パートナー関係を強化し、良好な関係を築いている。また、中国政治の中枢である北京市では、6月11日から中共ウイルスの感染者が再び急増した。首都の政治機能を守れるかどうかが習近平当局にとって大きな試練となっている。

中国側が死傷した兵士の人数を公開しなかった理由について、唐氏は「インド側に証拠があるから、中国側は死者数をねつ造しにくいだろう。それに、実際の死傷者数を公表することは、中国軍のメンツを潰すことになるという不安がある」とした。

1960年代以降、中印両軍は国境地帯で頻繁に衝突した。今年5月にも、両軍の兵士が複数回、乱闘した。6月16日の殴り合いで死者が出たのは1975年以降初めてだ。

(翻訳編集・張哲)

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