【紀元曙光】2020年8月26日

(前稿より続く)中国人嫌いのタウンゼントに、もうしばらく壇上にいてもらう。
▼彼が現地で見た中国人は、まさに目に映ったままの、汚く、ずるく、欲深いだけの、理解し難い人間どもであった。ゆえに「インドより、ひどい」と、目をそむけたい感情を終始禁じ得なかったという。
▼ただし、繰り返すが、ラルフ・タウンゼントが中国にいた期間は2年余りである。赴任地に嫌気が差すには十分な長さだが、現地語も漢字も解しない欧米人が中国文化を理解するにはあまりに短い時間と言わざるを得ない。彼が目にした個々の場面は、確かに見たままの中国の姿ではあるが、それをもって中国と中国人を総括し結論づけられるほどの体験であったとは言えない。
▼小欄の筆者は、タウンゼントについての「中国と中国人の本質を良く知っていた数少ない欧米人の一人だった」という一般的な評価を、褒めすぎの過大評価であると思っている。これを「欧米人から見た中国」と限定するなら、一応、妥当な評価と言えるだろう。ただ、そこに書かれた個別的な描写については、ほとんど全てがマイナスの中国人像であるが、「今もありそうだな」と思わざるを得ない。
▼そう考えると、電流がショートするように「中共以前から中国人は悪かったのだ」という結論に陥りがちになるのだが、それは本稿の目指すところではない。もとの中国人の素質がどうであれ、共産主義という悪魔思想が中国に入るまでは、たとえタウンゼントの目に同じ人類とは映らなかったにせよ、中国人はそうやって生きてきたのである。
▼中国で生きるということは、大変なのだ。(次稿へ続く)