【紀元曙光】2020年8月27日

(前稿より続く)久しぶりにタウンゼントの『暗黒大陸 中国の真実』を開いて、良かったと思っている。以前気づかなかったことが、見つかるのだ。
▼租界(そかい)という歴史用語が書中にでてくる。中国国内でありながら、力ある他国の管轄のもとに行政権や治外法権が置かれる地域をいう。現代的な価値観でいえば理不尽なものであるが、共産党中国は、ことさらに「欧米列強および日本の帝国主義による不当な中国侵略」と決めつける。
▼上海の租界が有名だが、その他にも天津、広州、漢口(武漢)、厦門(アモイ)など各処に置かれた。この租界について、タウンゼントの本に興味深いことが書いてある。租界の存在を、なによりも中国人が喜び、そこへ入りたくて殺到した。第一の理由は「租界のほうが安全」だからだ。
▼「外国の租界となり、安全な交易が保障された。元々、中国人の土地は危険が大きすぎて中国人でさえ商売はできないから、安全とわかると、以前の不人気が嘘のように中国人が押し寄せた。ひとえに財産の保護のためである」。
▼「多額の金を出さねばとても財産の安全は保てない租界の外に比べたら、外国運営の領土は天国である」とタウンゼントは書いている。それほど租界の外側は、外国人はおろか中国人にとっても危険極まりない、盗賊や暴力団が闊歩する無法の地であったことが分かる。地元の暴力団ばかりではない。中国軍の兵士も、敗走時には恐るべき略奪集団になるのである。
▼前稿の末尾に「中国で生きることは、大変なのだ」と書いた。その苦労を想像せずして、「中国人」を知ることはできない。(次稿へ続く)