【紀元曙光】2020年12月11日

釣り針にはエサがついている。それに騙された魚が釣られるのだ。
▼菅義偉さん。残念ながらあなたの言葉は、国民の心には入ってこない。口先だけで実のない人よりは幾分ましかもしれないが、今は平時ではないのだ。一国の宰相たるもの、この国難ともいえる重大な危機をいかにして乗り越えるか、それを具体的に語り、日本国民をまとめ上げる真の雄弁さがほしい。
▼11日のインターネット番組で、菅首相の生の声が流れた。司会者の振りに、いきなり「ガースーです」の自己紹介。できもしないウケ狙いに一億国民がひっくり返った。
▼そんなことは、どうでもいい。それよりも問題なのは、11月12日にバイデン氏を「次期大統領」として15分ばかり行った電話会談のなかで、日本領である尖閣諸島が、バイデン氏のほうから「米国の防衛義務を定めた日米安保条約第5条の適用範囲である」と明言したことを、菅首相および日本政府がどう受け止めたかである。
▼「私の当時の想定の中に入っていなかった。それをいきなり言っていただいた」と菅さんは言う。飴玉をもらった子どものように、日本側が無邪気に喜んだ様子がうかがわれる。それが釣り針のエサだと、お気づきにならないか。エビで鯛を釣るように、口先だけの尖閣防衛で日本を籠絡できるならば、バイデン氏とそれを背後で操る中国共産党にとって、これほど安い買い物はない。
▼ポンペオ国務長官は「中国共産党は、中国人民を代表していない」と述べた。敵の急所を突く、まさに舌鋒である。この胆力が日本の政治家になければ、日本は極めて危うい。