【紀元曙光】2021年1月19日

相手の立場で考える。それができているかと自分に問えば、反省しかない。
▼コロナ禍が過ぎて、世の中が元に戻る日を、心から待望する。1年1ヵ月前の日本人は、何の心配もない日常のなかにいた。親しい人と会い、にぎやかに食事を楽しんだ。満員の映画館や劇場、あるいはスタジアムで、自分の好きな娯楽を満喫できた。平凡な日常のなかに、人それぞれの幸せがあった。
▼そうした幸せがなくなったわけではないが、今は世の中の情況があまりに変わってしまった。人と人が近寄りにくくなることは、こんなにも寂しいものかと思う。社会は、単なる売り買いのシステムではなく、分業がうまく機能することで幸福感をふくらませる場でもある。「毎度ありがとうございます」「この前のお惣菜、おいしかったわよ」。そんな声を、もっとたくさん聞きたい。
▼今は、それがなかなかできない。ネット購入した商品を届けてくれた配達員さんへ、インターホン越しにかける言葉は「あ、ドアの前に置いといて」。コロナ禍のなかで致し方ないとは思うが、日本人は何か大切なものを、一時的とはいえ、失くしていないかと懸念するのだ。
▼読者の皆様は、コロナ禍が完全に終わったら、まず何をなさいますか。小欄の筆者は、満席の寄席へいって落語を聞き、満場の両国国技館で大相撲を観戦することを、無上の願望としています。どちらも、まだ叶いませんが。
▼相手の立場で考えれば、落語の師匠方も、土俵上の力士も、大勢のお客さんの前で、思いっ切りやりたいに決まっています。思いは皆同じ。辛いけど、頑張りましょう。