チベットの光 (1)
チベットの片田舎、シャアツェ地方と呼ばれるところには、美しく豊かな畑が広がっていた。その畑の中では、七~八歳ぐらいの少年が働いていた。
少年は、見るからに重そうな鍬を自身の頭よりも高く振り上げていた。少年の腕はやせ細り、鍬を振るたびにその腕は今にも千切れそうであった。遠目から見ると、頭が大きく手足は細く、炎天下のなかで今にも倒れそうであった。
このやせ細って可哀そうな少年は、元は活発で可愛らしかったウェンシー(チベット語で「トェバガ」)少年で、一片の清涼さと霊性の充満した大きな目以外は、みてくれがすべて変わってしまっていた。ウェンシーが幼年時分に着ていた服は上等な絹織物で、頭には黄金の飾り物をし、真っ赤な唇をした顔には天真爛漫な微笑みをたたえていた。
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