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チベットの光 (8) 報復の立志

「お母さん!」 ウェンシーには母の苦悶と憤怒の表情が見て取れたので、心痛で耐えられなくなり、涙が零れ落ち、それが母の顔と衣服を濡らした。妹のプダも一緒に泣きながら、母の手を取ってその身体を揺らして覚醒を促した。しばらくして、母は気が付き、ウェンシーをみとめると涙を流して嘆息した。

 「お兄ちゃん!」 母はすぐには嗚咽して声も出なかった。ウェンシーの心は緊張し、母の遺憾が吐露されようとしていた。母が彼に、「天に昇って桃を摘む」「海に入って龍の髭を抜く」というような、どんな難しいことを求めたとしても、彼はその願いを叶えてあげたかった。

 母は、心痛のまま傷ついた息子を見て、その頭を掴んで言った。「お兄ちゃん!あなたは自分で何をしたか分かっているの?お母さんと妹がどんな生活を送っているのか知っているの?あなたはわたしたちの仇が現在どんな生活を送っているのか見たでしょう。あの財産はもともとわたしたちのものなのよ。あなたはこの恨みを忘れてしまったの?この母、年老いた老婆を見なさい。泣いても泣ききれないじゃない。それなのにあんなに気持ちよさそうに歌って…あなたの心の中には母がまだいるのかしら…」

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