(Acidpix/Creative Commons)
【医学古今】

経絡敏感人

現代医学は過剰に検査機器に依存し、人間自身の持つ感知能力を無視する傾向があります。一方、伝統医学は最大限に人間の感知能力を生かして、生理や病理の現象を認識してきました。感知能力は各自異なり、ある面では常識を超えた能力を持つ人もいます。中でも経絡の現象に対して優れた感知能力を持つ人は、「経絡敏感人」と呼ばれています。

 経絡について、漢方医学は生命構造の一部分だと認識していますが、現代科学では未だにその実体を解明できません。経絡に敏感な人は経絡に沿って流れる気の動きやツボの位置を感じることができます。私が治療していた患者さんの中に、このような経絡に敏感な人が数人いました。

 ある肩関節痛の患者さんは、膝の外下方にある陽陵泉というツボに鍼をすると、体の側面にある少陽胆経に沿って肩まで気の流れを感じ、気が肩まで届いたら、肩関節の痛みはすぐ無くなくなりました。また、ある歯痛の患者さんを治療した時、手背部の合谷というツボに鍼をすると、気の流れが上肢の前外側に沿って痛い歯まで伝わった途端、歯の痛みが消えました。この患者さんはツボの位置を正確に感じることが出来て、僅か5ミリずれたところに鍼をしても、同じ感覚がなく、歯の痛みも改善できませんでした。このような患者さんを治療しながら、いろいろ教えてもらうと非常に勉強になります。

 

▶ 続きを読む
関連記事
冬の冷えで不調を感じやすい季節に。中医学の考え方から、腎を温め心と脳を守る「にらラーメン」を解説。身近な食材でできる、冬の養生をやさしく学べる一編です。
抗うつ薬は本当に「脳の不調」を治しているのか。元FDA医師が、化学的不均衡説の限界と長期投薬のリスクを指摘し、うつ病治療を根本から見直す必要性を訴えます。
なぜ私たちは、気づかぬうちにネガティブ思考の渦に飲み込まれてしまうのか。脳科学と最新研究から「絶望のループ」の正体をひもとき、抜け出すための具体的なヒントを探ります。
101歳で運転も世界旅行も現役──栄養学者が語る、遺伝ではなく「7つの生活習慣」こそが長寿の鍵。誰でも実践できるシンプルな秘訣が詰まっています。
毎日使う鍋や食器が、知らずに体へ影響しているかもしれません。がんを克服した教授が実践する「無毒キッチン」の知恵を通して、今日からできる安心な選び方と食習慣を学べる一編です。