『弟子規』の連載にあたって

読者の皆さんに中国の正統文化を紹介し、かつ中国語学習の便に供するために、『弟子規』の連載を始めます。

 『弟子規』は、中国の清代後期に広く使われた道徳啓蒙用の読み物で、宋代の朱熹が著した『童蒙須知』を、清代康煕年間の読書人・李毓秀が『訓蒙文』として改編し、後に清朝の賈存仁が修訂を加えて名前を『弟子規』としました。

 朱熹は、当時の子どもたちは道徳が荒廃し、利益ばかりを重んじて礼節を忘れているのを憂い、夏商周三代の優れた教育の伝統を復活させねばならないと考えて、一連の国語教材を編みました。その一つが児童の道徳啓蒙のための『童蒙須知』です。

 『童蒙須知』の流れをくむ『弟子規』は、児童に倫理道徳と基本的な礼節を教えることを主としており、その序に当たる「総叙」(本連載の第一単元)は、『論語・学而』の孔子のことばから引用したもので、それが『弟子規』全書の趣旨ともなっています。

 『弟子規』は、内容が具体的で児童にも理解しやすく、しかも各句が3文字からなっていてリズミカルに読めることから、近年中国人社会で児童の道徳啓蒙書として徐々に広まりつつあります。

 『弟子規』は全体が1080文字からなっており、内容から8つのパートに分かれていますが、各パートの分量が多く、かつ古文で書かれていてわかりにくいことから、近年、正見ネットがそれを32の単元に分け、かつ平易な注釈と現代中国語訳、さらに関連故事を付けてネット上で公開しました。

 本連載は、その正見ネットに基づいて日本人読者用に編集したものです。読者の皆さんが中国の正統文化の一端に触れることができ、かつ中国語学習の便に供することができれば幸いです。

 なお、正見ネットで掲載された内容が、2008年5月に台湾の益群書店から『正見-弟子規』として出版されており、日本からも入手可能です。

(智)