≪医山夜話≫ (45)
しゃっくり
その朝、男性は診療所が開く前から廊下で私を待っていました。私がドアを開け、「まず予約を取ってください」と言ったとたんに、彼がしゃっくりをしました。この男性は、私に何かを話したがっていましたが、連発するしゃっくりを抑えられずに涙をこぼしました。彼は60歳前後で中柄、とても優しい顔をしています。
私は躊躇せずに、直ちに彼を診察室に案内しました。彼の耳の後ろを10秒ほど強く押さえると、しゃっくりは止まりました。それから、私は彼の両側の「翳風(えふう)」(耳の後ろ下方部)というツボを鍼で1.5センチほど刺し、しゃっくりは完全に止まりました。一瞬の出来事に、彼は驚いて言葉も出ないようでした。
しばらくすると、彼は自分の病状を話し始めました。しゃっくりは3週間前から始まり、1分から3分に1回、止まることなく続きました。入院しても医者は何の治療も思いつかず、ただ彼に睡眠薬を飲ませたり、生理食塩水を点滴したりしました。寝付くとしゃっくりは出ませんが、目が覚めるとまた絶え間なく続きます。このような生活が三週間続き、彼は限界に達していました。彼は自殺を図ったのですが、友人が急に私を思い出して、早朝にもかかわらず、私の診療所を訪れることになったのです。
鍼を刺した後、15分経ちましたが、しゃっくりは再発しませんでした。「もう家に帰ってもいいですよ。耳の後ろに刺している鍼はそのまま残して、1~2時間後に自分で抜いてください」と言いましたが、彼は帰ろうとしません。仕方なく、彼に待合室で休憩してもらうことにしました。2時間経っても彼は帰ろうとせず、家族が食べ物と水を届けに来ました。しゃっくりが止まらなかったため、彼はすでに3週間も食事を口にしておらず、ずっと点滴で体力を維持していたのです。
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