チベットの光 (54) 再び罪業を償う
果たして、それはミラレパの叔母であった。彼女は口で罵りながら、棍棒を手にして猛烈に殴りかかってきた。ミラレパは身をひるがえしてこれを避けようとするものの、身体が衰弱しきっていて、駆け出した途中で石につまづき、脚がもつれて近くの渓流に転がり落ちた。
叔母は罵りながら後ろから追ってきて、彼に追いつくと手にした棍棒で死に物狂いにミラレパを乱打した。ミラレパはほうほうのていで逃げ出そうとするが、容易に立ち上がれない。彼は涙を流しながら詩歌を歌った。
叔母さんよ、思い出してほしい 私は郷里を追われたのだ
老いた母は悲痛の中で亡くなり 妹は糊口のために他所へ行った
親子三人の苦痛は いったい誰が与えたのか
私があなたの門前に行くと 猛犬をけしかけられた
罵詈雑言の限りを尽くされ 私の心は冷え切ってしまった
杖が雨のように打ち据えられ 弱った私の身体は事切れそうだ
私は修行者の身の上 怒ろうにも怒りようがない
叔母さんよ、怒りをおさめて 私に食料を布施してくれないか
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