(Johannes Simon/Getty Images)
≪医山夜話≫ (17) 

ナンシーのカルテ④

ナンシーが私のクリニックを最後に訪れてから、だいぶ日が過ぎました。私の推測では、彼女の化学療法は第一段階と第二段階を過ぎたはずです。知らせがないのはよい知らせだと自分に言い聞かせ、ナンシーが回復していることを願いました。

 ナンシーがクリニックを再び訪れたのは、私が彼女のことを考えていた矢先でした。彼女は車椅子に乗せられて、体は三分の一くらいに萎んでいました。以前の彼女は体が大きく自信満々な感じだったのですが、今はとてもその頃の面影はありません。最も驚いたのは、彼女の目・鼻・耳などから血が滲みでていることでした。血の滲んだ汗が彼女の肌から流れていました。このような症状を私は見たことがありません。私は、ナンシーの夫に、彼女をすぐにでも救急病院へ連れて行くよう提案しましたが、意外にもナンシーは強い口調で反論しました。「いいえ! もうあの場所へは、二度と行かないわ。もう一度行けば、私はもうその部屋から出ることができなくなる!」

 ナンシーの目からは血の滲む涙がこぼれました。彼女は弱々しくなりながらも、これまでの経緯を話してくれました。

▶ 続きを読む
関連記事
新品の衣類には、染料、しわ防止加工、防水・防汚加工などの化学物質や、保管・試着時の汚れが残っている可能性があります。肌トラブルを防ぐため、着る前に洗う習慣が大切です。
歩行は、前頭葉や小脳、頭頂葉などが連携する高度な動作です。歩く速さ、歩幅、腕の振り、方向転換の変化は、認知症やパーキンソン病などの早期サインとなる可能性があります。
生産性を重視する社会では、休むことを無駄や甘えのように感じがちです。しかし休息は、努力の報酬ではなく、人生を味わい、人とのつながりを取り戻す大切な時間です。
スマホやパソコンで目を酷使する現代。80歳を過ぎても老眼鏡なしで小さな文字を読む中医学医師が、目を守る習慣を紹介します。
筋トレ初期の筋力向上には、筋肉の成長だけでなく神経系の適応が関わります。視覚化や自己暗示、使う筋肉への集中が、脳と筋肉の連携を高める可能性があります。