≪医山夜話≫ (17)
ナンシーのカルテ⑤
ナンシーは引き続き治療を続けており、結果がどうなるかは誰も予測することができません。死神に設けられた関門を乗り越え、九死に一生を得られるかどうかは、彼女自身が決められる事ではありません。彼女が遭遇した様々な困難は、彼女が蓄積してきた過去からの業による結果にみえます。私の理解では、過去の人生や今の人生で、ナンシーが作り出した業が彼女の命を脅かしており、その苦しみにより彼女はその借りを返しているのです。医師として、私にできることは、彼女がそれを理解し受け入れられるようにアドバイスすることだけです。「もっと善良な心で人に接しなさい」と。
よく人から、「なぜ人はがんになるのか」と聞かれますが、現代医学から解釈すれば、さまざまな要素が挙げられます。例えば、遺伝、喫煙やアルコールなどの生活習慣、環境汚染、食事、性格などです。しかし、これだけではがんの根源を説明することはできません。がんの根本的な原因は、別の空間に存在する「業」であり、現代のテクノロジーを駆使しても、触れることも見ることもできないものです。
私は、ナンシーの病気を治療する過程で、これまでに気づかなかった問題点を発見しました。それは、多くのがん患者に共通するものですが、つまり、彼女は生活の中でぶつかった様々な気に障った事柄を、長期にわたって自分の心に留めておくことです。人は、時として気に障るような言葉を投げかけられたりするものですが、がん患者たちは、それらの言葉を決して忘れず、いつまでもその恨みを抱きつづけているのです。
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