メタンフェタミンで魚も薬物中毒に 「禁断症状」に似た行動も=研究

最新の研究発表によると、自然界の水がメタンフェタミンに汚染されると、野生の魚も薬物に汚染され、中毒になるという。魚は人間と同様の神経系を持っており、「ドーパミン報酬経路に関連した行動の依存性」が認められた。魚たちは、薬物が捨てられた排水を探したという。

このほど、全米大気降下物研究支援計画(National Atmospheric Deposition Program)の研究者らは、米国の一部の地域で、雨水に高濃度のPFASと呼ばれる有害化学質が含まれていることを発見したと発表した。

薬物の多くは、人体に十分に吸収されず、他の成分に変換された後、排泄物と一緒に排水溝などに流れる。現在の下水処理場は、これらの化学物質をろ過するようには設計されていない。多くの下水道の水は、都市を流れる河川や沿岸部に渡っている。

研究チームは、メタンフェタミンが確認された自然水域にすむ、サケ科の魚ブラウントラウトに与える影響を調査した。メタンフェタミンは強力な中枢神経刺激薬で、乱用者が増加している。

研究者らは、水中のメタンフェタミンとその副産物の1つであるアンフェタミンを一定の濃度にすることで、ブラウントラウトに影響があるかどうか、また、薬物依存になるかどうかを調査した。

メタンフェタミンの入った大型水槽で魚を8週間以上に飼育した後、薬物のないきれいな水に入れ替えて、魚の行動を観察し、脳内の化学物質を調べて、薬物にまったく接触しない魚のデータと比較した。

データによると、薬物接触の経験がある魚は、薬物が含まれる水を好むが、薬物のない水にいた魚はこのような嗜好を全く持たなかった。

また、薬物にさらされた魚は、薬物のない環境で活動性が著しく低下した。これは、人間が解毒時に示す不安やストレスの症状と一致すると研究者らは指摘している。

さらに、薬物が屎尿として水路に捨てられている場所を探すこともわかった。

研究者らは、薬物にさらされた魚の脳組織を調べ、特定の化学変化も発見した。「解毒」に成功した後、つまり不安の症状がなくなった後も、これらの魚の脳組織には薬物暴露の化学的特徴が残っていた。

研究は、薬物が自然環境中の生物に与える影響が、人間への影響と同じように長く続くことを示唆した。

この研究は、7月6日に『実験社会心理学研究 (Journal of Experimental Psychology)』誌に掲載された。

米国薬物犯罪事務所(Office on Drugs and Crime)2021年の調査によると、世界には年間約2億6900万人が薬物乱用者がいる。

同年6月10日に国連薬物犯罪事務所(UNODC)が発表した報告書によると、インド太平洋当局は2020年、前年比19%増となる150メートルトン超のメタンフェタミンを押収した。これは記録的な押収量である。

さらに同報告書によれば、コロナ禍にともなう制限により短期間の途絶があったが、現在は麻薬密輸取引状況が再活性化してその容量も増えているという。

合成薬物サプライチェーンの出発点、中国工場から インド太平洋地域で記録的な押収量

(大紀元日本語編集部)