大紀元時報

合成薬物サプライチェーンの出発点、中国工場から インド太平洋地域で記録的な押収量

2021年6月28日 11時40分
2019年5月、ラオスとの国境に当たるメコン川流域の麻薬密造地帯で警備活動を行うタイ王国軍兵士等(AFP/GETTY IMAGES)
2019年5月、ラオスとの国境に当たるメコン川流域の麻薬密造地帯で警備活動を行うタイ王国軍兵士等(AFP/GETTY IMAGES)

最近、インド太平洋地域で違法な合成薬物製造が急増している。これには新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック、ミャンマーの軍事クーデター、合法の「前駆体化学物質(麻薬前駆体)」の転用という新たな手法の出現など、すべてが要因として絡んでいる。

感冒薬(風邪薬)などの用途に使用されるエフェドリンやプソイドエフェドリンといった合法な化学物質がこうした違法薬物の前駆体となる。犯罪組織はこの合法化学物質を使用して、日本語ではシャブやスピードなどの俗称で呼ばれるメタンフェタミンなどの違法薬物を製造する。

2021年6月10日に国連薬物犯罪事務所(UNODC)が発表した報告書によると、インド太平洋当局は2020年、前年比19%増となる150メートルトン超のメタンフェタミンを押収した。これは記録的な押収量である。

国際連合が制定した6月26日の「国際麻薬乱用・不正取引防止デー」に先んじて公開された同報告書には、コロナ禍に伴う制限により短期間の途絶があったが、現在は麻薬密輸取引状況が再活性化してその容量も増えている。

国連薬物犯罪事務所・東南アジア太平洋地域事務所のジェレミー・ダグラス(Jeremy Douglas)代表は声明を通して、「パンデミックにより世界経済は減速したが、同地域を支配する犯罪組織は速やかにその状況を逆手に取ってうまく利用した」と述べている。

こうした組織の適応手段として、「前駆体化学物質」を使用する方法が挙げられる。タイミャンマー、ラオス3か国の国境に当たる麻薬密造地帯「黄金の三角地帯(ゴールデン・トライアングル)」で最もよく製造・取引されるようになった違法薬物のメタンフェタミン製造に、こうした前駆体が使用されていることは最近になるまで知られていなかった。

当局が発表したところでは、規制不十分な中国の工場の一部が前駆体化学物質を生産しており、これが合成薬物サプライチェーンの出発点となっている。カナダのグローバル・ニュース(Global News)の報道では、オーストラリアに所在するマッコーリー大学のJohn Langdale(ジョン・ラングデール)博士が2018年に発表した報告書では、主要供給源として広東省に拠点を置く複数の製造業者が指摘されている。化学物質はこうした製造業者から世界最大の覚醒剤密造国であるミャンマーの「黄金の三角地帯」麻薬製造施設に運搬される。

軍閥や民兵組織から5つの中国犯罪組織の総称「三合会」(別表記:三哥、トライアド)に至るまで多岐に渡る地域の麻薬密売組織は、コロナ禍に伴う制約下においても密輸を促進する方法を模索していた。たとえば、国連薬物犯罪事務所の報告書にもカンボジアで大規模なメタンフェタミン生産が開始されたと記されている。

ダグラス博士はロイター通信に対して、「組織犯罪[シンジケート]は製造場所をいさかか分散させるために一部の生産拠点を他の地域に移していることから、現在では集中的な密造地帯というものが少なくなっている」と説明している。

ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が伝えたところでは、ミャンマーの軍事クーデターにより黄金の三角地帯の勢力均衡が崩壊したことで、2021年2月1日以降メタンフェタミンが過剰に生産されるようになった。

米国国立衛生研究所(NIH)の発表によると、メタンフェタミンを長期間使用すると重篤な不安発作、混乱、不眠、気分障害、暴力的行動といった症状が発症するだけでなく、偏執症、幻聴、妄想などの多くの精神病的な症状が発生する可能性がある。

タイ王国麻薬取締警察(NSB)の副長官を務めるポルノチャイ・チャロエンウォン (Pornchai Charoenwong)少将はボイス・オブ・アメリカに対して、「ミャンマーの麻薬製造現場付近の取り締まりで押収される薬物の量は以前よりも増加している」と述べている。こうした違法薬物はタイを抜けて他のインド太平洋地域で流通する。

専門家等の見解では、ミャンマーの軍事クーデターのような政治的混乱により犯罪組織が活動しやすい環境が発生するため必然的に麻薬取締局の問題が深刻化する。2020年2月にオーストラリア、カナダ、米国を含む地域全体の情報機関の専門家等がミャンマーに一堂に会し、違法薬物や化学物質の密輸取り締まりに関する情報を交換して戦略を協議した。

最近発生した事件の1つとして、2021年5月にオーストラリア領域警護軍(ABF)が末端価格で約80億円(約8,000万米ドル)に及ぶ316キロの高依存性覚醒剤「アイス(メタンフェタミンの英語の俗称)」を押収した事例が挙げられる。これはタイの港を出港した貨物船に積載された家庭用品の中に隠されていた。

国連薬物犯罪事務所のインシク・シム(IInshik Sim)違法薬物研究員は声明で、「犯罪組織は刷新的で、法執行機関による前駆体化学物質の密輸取り締まりをかいくぐる方法を継続的に模索している」とし、「情報の共有が非常に重要となる。こうすることで犯罪組織の計画をより良好に予測し、戦略的対応と作戦を策定することが可能となる」と話している。  

(Indo-Pacific Defence Forum)

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