情熱的天才の衝撃的長編小説――『嵐が丘』(二)

嵐が丘』の英語名は「Wuthering Heights」です。「Wuthering」は英語ではあまり見られない地方の言葉で、「暴風雨」「嵐」を意味しており、この物語の激烈な感情を暗示しています。「Heights」は海抜の高い場所という意味で、当時、イギリスの中流階級の裕福な家は荘園のある邸宅を有していました。

物語の中心が海抜の高い荒原の邸宅で起こったことについてですが、この小説は、倒叙形式、挿入法などの創作方法が用いられており、時間背景が比較的複雑なので、読者が理解しやすいよう、古い出来事から順に紹介していきたいと思います。
 

真実の恋には常に試練がやってくる

嵐が丘の地主アーンショウとアーンショウ夫人には、ヒンドリーという名の男の子とキャサリンという名の女の子の2人の子どもがいます。ある日、アーンショウは外出先から孤児の少年を連れ帰ってきて、哀れみの気持ちから、男の子をヒースクリフと名づけ、実の子のように可愛がりました。

しかし、このことをヒンドリーは快く思わず、召使たちたちと一緒にヒースクリフをいじめました。けれど、妹のキャサリンはヒースクリフとすぐに仲良くなり、一緒に遊ぶようになったのです。成長していくにつれ、キャサリンとヒースクリフの感情は深まり、一方、ヒンドリーのヒースクリフに対する偏見、排斥、いじめ、そして、侮辱はますます強まっていきました。

これを見たアーンショウはヒンドリーをロンドンの大学に送り、無事に成長することを期待しました。その後、キャサリンは利己的で、強情で不遜な、非常に個性的な美しい女性に成長し、ヒースクリフの彼女に対する感情も、どんどん深く、そして、非常に強いものとなりました。

キャサリンもヒースクリフを愛していましたが、心の中では矛盾していました。彼女はヒースクリフと結婚することは、召使に嫁ぐことになり、今の身分と面子をも失い、人に会うのが恥ずかしくなると考えていたのです。
 

誘惑に勝てない恋

ある日キャサリンとヒースクリフは、ひょんなことから「鶫の辻」の敷地に入り込み、屋敷の中を覗き込んでいる最中、番犬に追われ、キャサリンは足を噛まれてしまいました。鶫の辻の主人リントンは彼女が嵐が丘の娘キャサリンと知ると屋敷に招き入れて手当てをしました。

キャサリンのけがは思いの外ひどく、鶫の辻に3週間ほど滞在することとなり、その間、彼女はリントン家の長男、エドガー・リントンの紳士的な振る舞いと教養に心を惹かれるようになりました。彼女は自分の相手として、紳士的で家柄も釣り合い、優雅な生活も送れそうなエドガーと、自由奔放で男らしいが、地位もお金もないヒースクリフのどちらがよいか、迷いました。

キャサリンとエドガーが知り合ったことをきっかけに、アーンショウ家とリントン家の関係も近づき、ある日、エドガーは大胆にもキャサリンに求婚しました。そしてあれこれ悩んだ末、キャサリンはエドガーの求婚を受けました。偶然にも、ヒースクリフはこのことを知り、絶望し、そして、怒りのあまり、家を飛び出し、馬に乗って嵐が丘を去っていきました。必ずお金持ちになって再びここに戻り、復讐を果たすことを誓いながら。

(つづく)

(翻訳編集・天野秀)

江宇応