中国遼寧省の大連造船所で行われた進水式、2017年4月26日。(STR/AFP via Getty Images)

国際造船市場で中国最多の40%以上…中国海軍艦艇の能力向上につながる可能性=米報告

米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)の新しい報告書によると、商業船に対する国際的な需要が意図せず中国海軍の成長を押し進めているという。また中国共産党政権は不透明な商慣行のもと、数十億ドルの外国造船契約は中国海軍艦艇のアップグレードにつながる可能性があるとの懸念も示した。

報告書によると、中国海軍艦艇の建造を担当する4つの主要造船所は、毎年数十億ドルの外国商業投資を集めており、技術移転の機会も引きつけているという。

「中国の不透明な商慣行では、造船業界における資本の流れの透明性が限られている。このうえで、外国契約による利益は中国海軍のアップグレードするコストを下げる可能性が高い」と報告書は述べている。

中国共産党は、民間の商業活動を結びつけることで軍事力強化を図る「軍民融合」戦略を実施している。これには他国の技術を窃盗する企みが含まれると指摘されている。

軍民融合を念頭に、中国の一流国有造船所は国際契約から得られる利益を利用して、中国共産党が拡大する空母艦隊などの軍事プロジェクトを促進することができる。

報告書は、中国海軍艦艇の主要な建造者の一つである国有企業・中国船舶集団(CSSC)が中国政権のために武器や国家安全保障設備も開発していると指摘した。

報告書によると、中国船舶集団だけで世界の造船市場の21.5%を占めており、この大手企業は100以上の子会社を持っているという。米国は2020年に中国船舶集団を投資ブラックリストに載せたが、国際造船需要にほとんど影響しなかった。

中国船舶集団の例は、世界市場における中国造船業への依存を浮き彫りにしている。2020年、中国は世界の商船建造の40%以上も占めている。2位は韓国で31.5%、3位は日本で22.2%である。

世界の商船を建造している造船所が、中国の海軍能力を優位に押し上げるために利用されていることも報告書は指摘している。

4つの中国大手造船所である大連船舶重工集、江南造船滬東中華造船中船黄埔文沖船舶は、フランスや台湾のトップ企業に中国の戦闘艦と同じ乾ドック(編集者注:点検や補修のために水を抜くことができるドック)で船を建造することを依頼されており、近年、外国人投資家から数十億ドルを受け取っている。

以前は、現在中国の最新鋭空母を建造しているのと同じ乾ドックで、フランスの船が建造されていた。さらに、最近の衛星画像では、台湾長栄海運(エバーグリーン・マリン)の商業コンテナ船が隣のドックで建造されていることが示された。

この事案は、同社が台湾統一を狙う中国側への関与しているのではないかとの懸念を引き起こした。

「台湾の一流海運会社が、中国海軍艦艇を組み立てている造船所に金を注ぎ込んでいるということは、少なからず台北の人々を驚かせるだろう」と報告書は述べている。

「中国船舶集団の透明性の欠如と人民解放軍海軍支援の役割を考えると、外国企業は同社や他の中国造船会社と関わるのはより慎重になるべきだ。民主主義国家、特に中国周辺地域の国にとって、こうした関係は単なる憂慮にとどまらないだろう。国家安全保障に対する具体的な脅威だ」と報告書は指摘した。

CSISの調査によると、エバーグリーンは2018年から2022年にかけて、中国から44隻の船舶を購入したという。そのうち中国海軍の戦闘艦を製造していないとされる造船所で建造された注文は2件のみであった。

CSISの報告書によると、2019年から2021年にかけて、前述の4つの造船所は211件の商業船を受注したが、その約64%が中国・香港以外からのものだ。

西側諸国が共産主義政権の世界的野心をめぐって対立を深めている一方、商業船に対する世界の需要が中国海軍の開発を大きく加速させている可能性が高いと報告書は警告している。また、第2位、第3位の造船実績を誇り、なおかつ米同盟国である韓国と日本への契約を中国の代替とするよう促している。

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