4月、ソロモン諸島で中国が支援する運動競技場のオープンセレモニーに参加したソガバレ首相と駐ソロモン諸島中国大使リ・ミン氏(Photo by MAVIS PODOKOLO/AFP via Getty Images)

太平洋島しょ国めぐり豪中が綱引き 共産党の影響力拡大に懸念の声

太平洋島しょ国に「長い腕」を伸ばす中国共産党に対し、米豪NZなどは懸念を示しており、その影響力の打ち消しを狙っている。オーストラリア外相は2日、訪問先の島国サモアで記者会見を行い、新たな哨戒艇を供与する考えを示した。いっぽう、中国の王毅外相は複数の島しょ国を含む包括的な貿易・安全保障協定を打ち出したが、締結に至らなかった。

オーストラリアのペニー・ウォン外相はサモアのフィアメ・ナオミ・マタアファ首相との会談後、昨年座礁した哨戒艇の代わりとして、ガーディアン級哨戒艇を供与する考えを示した。「島しょ国にとってこれらの艦艇が重要であると分かっている」とウォン氏は述べた。

ウォン氏は豪州総選挙のわずか数日後にフィジーを訪問した。今週末にかけてはトンガにも足を運ぶ。

中国の王毅外相は5月26日から6月4日にかけて、太平洋島しょ国の8カ国を外遊しているが、中国が提案した包括的な貿易・安全保障協定の合意は見送りとなった。一部の島しょ国が慎重姿勢を示したためだ。

ロイター通信の5月25日付によると、包括的な協定は警察活動や安全保障、データ通信の協力が盛り込まれている。中国が島しょ国の警察を訓練してサイバーセキュリティ分野に関わり、外交官の駐留と交流を拡大し、中国に天然資源へアクセスする機会を増やす内容だという。

フィジーのバイニマラマ首相は会談後のツイートで、太平洋には「権力に重きを置いた超大国ではなく、真のパートナー」が必要だと暗に中国を牽制した。

多国間協定が棚上げされたことについて、オーストラリア国立大学の研究者Zhang Denghua博士は豪ABCの取材に対し「島しょ国は、長年培ってきた地域的パートナーとの関係を損ないたくないため、中国側に取り込まれたと認識されたくない」と述べた。ソロモン諸島と中国との安全保障協定が明らかになり、日米豪NZなどが強い懸念を示したことも、島しょ国首脳がより慎重になることを後押ししたのではないかとの考えを示した。

いっぽう、Zhang氏は協定が棚上げされたことによって、太平洋に影響力を及ぼそうとする中国共産というの野望が終わったわけではないと指摘した。

島しょ国のうち10カ国は中国と「一帯一路」協力覚書を締結しており、中国と地域の貿易総額は2021年までに53億米ドルに達している。

訪米中のアーダーンNZ首相とバイデン大統領は首脳会談後の共同声明で、中国を念頭に、価値観や安全保障上の利益を共有していない国が太平洋で持続的に軍事的プレゼンスを持つことは地域の戦略的バランスを根本的に変えることになるとの懸念を表明した。

また、米国のバイデン大統領はインド太平洋地域における貿易と経済交流を強化するために「インド太平洋経済枠組み」を立ち上げるなどして、中国共産党の影響力の拡大防止を図っている。

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