心身を癒す香り(薫り)ーー古代の人々の芳香生活【雅(みやび)を語る】

現代の生活の中で、誰しも大きなプレッシャーと圧力を抱えています。今回は古代の人々がどのようにして香り(薫り)を使っていたのかを皆さんにご紹介したいと思います。

現在、よく耳にするアロマセラピーは草本植物に対する一種の活用方法です。中国では、すでに『神農本草経』が編纂されはじめた頃から、植物を利用し始め、明朝の李時珍が書いた『本草綱目』の中にはすでに2千以上の薬草と、8千以上もの処方が記されています。

では、古代の人々はいったいどのようにして植物の香りを利用していたのでしょうか。
 

祭祀

お香を焚く方法はもともと祭祀の時に用いられました。中国の多くの文化は佛家や道家から由来しており、多くの絵画から古代の人々がお香を焚いて神様を拝んでいる光景が見られます。
 

娯楽時の薫物

お香を焚くと、心を和らげ、リラックスすることができるため、祭祀だけでなく、徐々に人々の日常生活に溶け込み始めました。曲を弾いている時、読書をしている時、詩を書いている時など、お香は欠かせない存在となりました。

宋朝になると、お香は非常に盛んになり、人々は品茶、生け花、絵画や陶器などの作品の鑑賞、そして、お香の使用を文人の4大雅事と見なすようになったのです。

唐の時代になると、鑑真が日本へ渡ったことをきっかけに、薫物の文化も伝わっていき、日本で香道として発展していきました。
 

衣にお香の香りをつける

古代の人々が来ている服もお香の香りがしていました。秦の時代からすでに香り袋をつける習慣がありました。当時は女性でも男性でも、年寄りでも若者でも、お気に入りの香りのする袋を飾りも兼ねて腰につけていたのです。
 

治療・病気予防

馬王堆漢墓から多くの出土品が発掘され、中にはフジバカマやスイートグラスなどの香りのする植物が入った薫り袋や薫り枕、薫炉などが含まれており、2千年以上も前の漢の時代から、人々はすでに薫り枕や薫炉などを使って、環境を改善したり、病気を予防したりし始めていたことが分かります。

現在もお灸治療がおこなわれており、これはいわば艾(もぐさ)を燃やした時の熱と香りで体内の寒気を取り除き、健康を維持する方法です。14世紀、黒死病が蔓延していた時期、人々は花びらや薬草を地面に撒いて殺菌したり、昆虫の繁殖を防いだり、伝染病を根絶したりしていました。
 

美容

古代の人々は入浴の時に、フジバカマや菖蒲などの香り高い植物を水面に浮かべていました。こうすれば、お肌をすべすべにできるだけでなく、香りもつけられます。

また、沈香やはちみつ、麝香(じゃこう)などを調合してお肌の保湿や美白に使っていました。何首烏(ツルドクダミ)やシナサイカチなどで髪の毛を洗うと、黒くてツヤツヤになるとも言われています。

昔の人々の智慧は今でも使えますが、しかし現在、お香を焚いて、心を安らげる静かで落ち着ける時間はなかなか作れません。そのため今ではアロマキャンドルや加湿器にアロマを加えるなど、現代風にアレンジされた香りの使い方が普及しています。ストレスや焦燥を感じている時、自分の好きな香りを嗅ぐと、張りつめていた神経が和らぎ、心が安らぎます。

ぐっすり眠りたいときは、ラベンダーの香りがよいでしょう。寒気や寒さを取り除きたい時は、艾の香りがおすすめです。

お肌を落ち着かせる時はバラの香り、心を落ち着かせる時は沈香など、それぞれの香り(薫り)には異なる作用があり、アロマキャンドルや加湿器、アロマディフューザーなど様々な使用方法があるので、自分に合った香り(薫り)と使い方を見つけ、日々の生活を心地よいものに変えましょう。

(翻訳編集・天野秀)

雅蘭