神秘的なヴァイキングの剣ウルフバートは、高純度の金属でできており、強靭で鋭く、戦場では超絶無敵です。これは考古学者を困惑させています。写真は、デジタル技術で修復されたウルフバートの剣です。(パブリックドメイン)

ヴァイキングの剣 鉄の純度に現代の武器専門家も困惑

神秘的なヴァイキングの剣ウルフバートは、高純度の金属でできており、強靭で鋭く、戦場では超絶無敵です。これは考古学者を困惑させています。というのも、西暦800年頃のヴァイキング時代には、この鍛造技術は存在せず、産業革命まで発明されなかったと考えられているからです。

ウルフバート(Ulfberht)の歴史は古く、ヨーロッパでは西暦800年から1000年にかけて、UlfberhtまたはVlfberhtと刻印されている中世の剣が約170本発見されており、ウルフバートは正確には剣の種類を表す名称です。

NOVA テレビメディアと「ナショナル ジオグラフィック」が制作したドキュメンタリー番組「ヴァイキングの剣の秘密」は2012年に初めて放送され、この謎に満ちた剣の冶金技術を垣間見ることができます。

 

ニュルンベルクのゲルマン国立博物館に展示されているウルフバートの剣。(パブリックドメイン)

 

この刀の鍛造方法については、武器の専門家を困惑させています。鉄を鍛えるには、鉱石を1650℃の高温にして液化させ、スラグと呼ばれる不純物を取り除き、もろい鉄を強くするために一定量の炭素を加えなければなりません。 

しかし、中世の鉄をつくる技術では、鉄をこれほどの高温にすることは不可能ですので、当時は鉱石を砕いてスラグをろ過する方法しかありませんでした。これでは効果が非常に悪くなります。

しかし、ウルフバートの剣のすごいところは、スラグをほとんど含まないほど純度が高く、当時の他の金属に比べて炭素含有量が3倍になっており、「るつぼ鋼(crucible steel)」と呼ばれる金属で作られているのです。  

鉄を高温に加熱する道具としては、1760年代から始まり、1830〜40年代まで続いた産業革命の頃に発明された「るつぼ炉」が最初だと考えられています。

ウルフバートの剣を鋳造する古代の工程は、いまだ謎のままです。そして、現代の技術を持ってしても、これほどの品質の剣を作るのは難しいのです。

 

1889年にノルウェーで発見された4本のウルフバートの剣の図面。(パブリックドメイン)

 

アメリカ・ウィスコンシン州の現代鍛冶職人リチャード・ファーラー(Richard Furrer)さんは、ドキュメンタリー番組「ヴァイキングの剣の秘密」の中で、こうした剣を作ることの難しさを語っています。ファーラーさんは、ウルフバートの剣を複製するのに必要な技術を持つ、世界でも数少ない人物の一人と考えられています。  

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「この剣を正確に複製することは、私の知る限り最も複雑なことです」と彼は言い、ウルフバートの剣を作った人は、昔から超能力を持っていると考えられてきたと付け加えました。

「土で武器を作れるだけでもすごいことなのに、曲がっても壊れない、切れ味がよく、長持ちする、しかも非常に軽い、そんな武器が作れるなんて、超常現象としか思えません」

ファーラーさんは数日がかりですべての工程を丹念にこなし、同じような剣を鍛造しました。鉄を丁寧に錬る中世の技術と、細部まで丁寧に再現する現代の技術の両方を駆使しているのです。 

鍛造の過程でわずかなキズやミスがあっても、剣は鉄くずになってしまうと言われています。

最後の武器展示では、 古風で質朴である圧倒的な存在感を放つヴァイキングの剣が公開され、とても見事です。

(翻訳・李明月)

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